ヨーク市の高校で

イギリス訪問 087

以前このブログでもちょっと触れたが、1年ほど前に、イアン・デービス教授(ヨーク大学)のアレンジで、2時間続きのドラマ授業を見学した。広大な敷地にモダンな校舎を構えるジョセフ・ラウントリー・スクールのAレベル・ドラマである。(下の写真は、Year8のアッセンブリー、生徒200名)

イギリス訪問 088

この学校が、ドラマ教育、シティズンシップ教育を先進的に実践しているところだとデービス先生から聞いていたが、なるほどそうで、これでは芸術系大学も顔負けだろうというくらいの設備をもつスタジオで授業が行われている。

イギリス訪問 111

Year12のAレベル・ドラマの履修生徒は14人。毎週4、5回授業がある。相当の密度である。ちょうどデバイジングの単元をやっているところで、三つのグループが、それぞれオリジナル作品の制作に励んでいた。

イギリス訪問 123

作品のテーマは、吃音者(の社会的抑圧)、悪夢、エバ・ブラウンの生活である。あいにく担当の先生は不在だったが、自分たちで思い思いにリハーサルを重ね、途中の仕上がり具合をミニ発表で見せてくれた。クラスの様子をUチューブでも発信しているそうで、さすがに手慣れたものである。

イギリス訪問 128

授業のあと、車座になって、6人(うち男子1人)の生徒に40分ばかり話を聞かせてもらった。ドラマを履修したくてこの学校を選んだという子もいたが、その彼女も含めて、大学で演劇を専攻するという子がこのなかにはほとんどいないのだという。詳しく聴いてみると、社会科学2人、音楽2人、ダンス1人で、演劇志望が1人だった。

ではドラマの授業で得られるものはなにかという私の質問に、居心地の良い表現空間が得られる、正解のないテーマに挑戦できる、パッションを表現する仕方が学べる、自分に自信が得られるようになる、友人が増える、ソーシャル・スキルが高まるといったような意見がこもごも返ってきた。(下の写真は、教室の窓から見える風景)

イギリス訪問 107

こうして並べてみると、とくに新しい意見ではない。私がもっとも打たれたのはそのことではなくて、彼らがそれぞれ自分なりの意見をもっていて、それをまっすぐに自分の言葉で語ってくれるところである。この学校が周囲の学校にくらべて特別に恵まれた環境の若者が多いことは彼らの自覚するところだが、そのぶんダイバーシティーが乏しい気がする、とも言っている。

“なんてまあいい子たちなんだろう。”それがこの学校を訪問して、最後に残ったわたしの印象だった。

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