Totnesの郊外にある英国国教会系のベリー・ポメロイ小学校(児童数104名)を訪ねた。トットネスは日本でも公開された映画「戦争の馬」の故郷である。
小さなビレッジの中心に石造りの教会があり、そこからちょっと離れたところにこじんまりした校舎がたっている。周囲は一面の牧草地だから、牧草地の中の学校といった方がふさわしいだろう。
英語を担当するナタリー・ヒッギス先生の授業を、9時から11時までじっくり見せてもらった。レセプション(5歳児)とYear1(6歳児)の複式授業である。大柄なヒッギス先生は生き生きとして豊かな表情の方だ。町なかの大規模な学校で経験をつみ、あえて小さな学校を選んでここに移ってきたという。
雨もようの校庭に整列した子どもたちが、ヒッギス先生に誘導され、寒風といっしょに教室に入ってきた。そのままリソース・ルーム(教室に付属するコート置き場兼小学習室)に直行、教室に戻ってきたら、みなブルーのセーター姿である。
まずは音楽にあわせてリズム体操、それが終わると、教室の4分の1ほどの広さを占めるカーペットコーナーに集まった。各列4人の6列、総計24人の子どもたちである。とってもお行儀がいい。移動に時間がかからないところをみるとあらかじめ席が決まっているようだ。
最初のプログラムは、野外遠足のスライドをみること。木の枝を組みあわせてつくった遊び場、案内人の活動、川岸の風景、バーベキューサイトなど、当日みたものを順番に写していくのだが、ただスライドを眺めるだけでなく、子どもたちがそのときどんなことをしたのか、そして何に気づいたのか、などを丁寧に言葉にして確認する作業をしている。これが次のプログラムの準備になっている。
スライド上映会が終わると、2学年が別々の行動になる。レセプション・クラスは、お遊びタイム。Year1は、机に移動して作文の時間である。ノートの上半分に絵を描き、下半分に文章をつける。さっき確認した遠足のできごとを各自で文章にしていくのだ。
フォニックといっていたが、たとえば“ぼくはきのう遠足にいきました”という文章を音でイメージし、それを文字に置き換えていく。ある程度できたら、ヒッギス先生かアシスタントの先生のところへいって添削してもらう。こうした個人作業が繰り返される。
驚いたのは、学年別の行動への移行がなんともスムーズだったことである。レセプション・クラスの子どもたちでさえそうで、さっそく校庭に飛び出して乗り物にのる子、備え付けの棚からお姫様みたいなドレスを引っぱり出して着る子と、自分たちでてんでに楽しんでいる。電池式のオモチャがピコピコ音を立てている同じ教室で、1年生の子たちは黙々と作文をしている。
“自分で行動できる独立心を育てることが学校の目標になっています”とヒッギス先生がいう通り、早い時期から、自分の行動を自分でマネージする訓練がされているようである。
お遊びタイムが終わると、そうとうに散らかっていた教室の床が、子どもたち自身の手でさっと片付けられたのだった。