Paingtonの山手にあるタワーハウス・スクール(小学部40名、中学部35名)は、インデペンデント・スクール(私立校)である。校長のジョーダン先生が、校門でにこやかにゲストを出迎えてくれる。
広い前庭をもつ校舎は1890年につくられた建物が中心にあり、廊下のあちらこちらにきれいなステンドグラスがはまっている。かつて訪ねたBrixhamのグラマーシー・スクールもこういう歴史的建物で、往時の居室を教室として使っていた記憶がある。
ジョーダン先生は南アフリカの出身である。白人だけの学校で育った経験から、むしろ学校は色んな背景をもつ子どもたちが一緒に学べる場であるべきだと考えている。先生の教育理念に耳をかたむけていたら、校長室に生徒代表の一団とカメラマンがあらわれた。一緒に記念写真を撮るのだという。(校長室で、右がジョーダン先生、左は私の友人のモーデイ氏)
それからキャンパス・ツアーである。ジョーダン先生にくっついて授業中の教室に入っていくと、たとえどんな状況であっても、生徒全員が即座に起立して出迎えてくれる。みごとなものである。じつに躾が行きとどいている。
ややあって、先生が厳かにゲストを紹介し、担当の先生と短い会話を交わす。こういう習慣の学校があるのは知っているが、どの教室でもこれを繰り返すうちに、なんだか少々申し訳ない気がしてきた。
少人数の学校とあって、ミルソン先生が指導するYear6(11才)の「ドラマ」のクラスも受講者3人である。そろそろ一本の作品が完成に向かっているらしい。参観したときは、リハーサルの最中だった。
黒板に図示されたプロットをみると、首相暗殺と金品強奪がからんだアクション満載のお芝居である。マスクの演技の静かな場面から、一転して背景のボードを巧みに活かした追いかけっこの場面になる。1人何役もこなすので大変忙しい。
ミルソン先生によると、完成した作品をビデオに収め、それをみながら振り返りをする予定なのだという。暴力と金をテーマにしたドラマとあって、最終的にはモラルの問題について生徒と話し合うらしい。
驚いたのは、先生が一通りアドバイスすると、演技はもちろん照明器具の操作から撮影まで、全部自分たちでやってしまうことだ。八面六臂の活躍である。
受講者7人のGCSEドラマのクラスもみせてもらったが、こちらでも生徒たちが効果音の創作をしていた。なるほどドラマの授業は、限られた時間で、段取りよく作業をすすめる訓練の場でもあるようだ。(写真は演技指導するミルソン先生)
タワーハウス・スクールは、恵まれた環境の学校といっていいだろう。一般の公立学校とは明らかにちがう学校文化をもっていて、それがすみずみにいきわたっている。とりわけ校長先生のリーダーシップにそれが象徴されているように感じた。