新春合宿のプレゼンフェスタ、今回は素材が大相撲、テーマは「海外に伝えたいクールジャパン」である。いつもの通り、当日あつめた資料を使って半即興プレゼンを創る。

まず深川の大鵬道場・大嶽部屋を訪ねて早朝稽古を見学した。大嶽部屋は、いつもラマダンのことが話題になるあの大砂嵐関が所属する部屋で、大横綱・大鵬の大きな絵が、土俵を見つめている。大砂嵐関はいなかったが8人の力士の稽古をみせてもらった。つぎに両国の国技館まで歩いて相撲博物館を見学し、それから新木場の宿舎に戻った。あとは2時間ほどでプレゼンをつくる。
なんといっても早朝稽古の印象が圧倒的だった。身体と身体が真正面からぶつかり合う稽古の迫力は相当なものである。四股にはじまり、テッポウ、腕立て伏せ、すり足、ぶつかり稽古、申し合いという流れを一通りみせてもらった。

すり足までいくころには、力士の背中から汗が吹き出し、そのぶん、びんつけ油のにおいもいっそう強くなったように感じた。ところが、ぶつかり稽古、申し合いまで進むと、もはやそんな感傷どころではなくなる。ひょっとして力士のだれかが過呼吸で倒れやしないか、とハラハラするほどの激しい展開だからである。若手力士たちは、みな全身に砂がべったりとはりついている。見ている間にも、2人が鼻血をだし、1人が軽い脳震盪をおこした。

感心させられたのは、先輩が後輩を指導するシステムが実によくできていることだ。ぶつかり稽古でいえば、後輩たちが、まず土俵に塩を撒いて「次おねがいします」と稽古の順番待ちの意志を示す。申し合いが白熱してくると、しばしば二人の若手が同時に塩を撒いて土俵にはいってきてしまう。もちろん激しい稽古ではあるのだが、ただ激しいだけではない。むしろ流れるようにプログラムが進んでいくので、そこに一種の様式美さえ感じるようになるから不思議である。
見学を終えて「実際に稽古をみると、これからテレビを観るときの見方が変わるよね」という声がでたが、それほどインパクトがある。実際、3つのグループのプレゼンのうち2つまで、朝みた稽古風景を取り入れた発表になった。テーマも、一方が「間のとり方」、もう一方が「立ち合いの(阿吽の)呼吸」という具合に重なっている。

(写真:国技館は、初場所を目前にひかえて色とりどりの幟が林立し、じつに華やいだ雰囲気である。外国人観光客もたくさんきていた。)
正月のプレゼンフェスタは、去年まで「第5福竜丸」「東京大空襲」と重いテーマが続いたが、今回の「大相撲」でもう一つ新しい境地が開かれたようである。
灯台下暗し。会員の小松理津子先生が、なんと尾車部屋のベテラン力士・豪風関を金足農林高校の教師時代に教えたことがある、と知った。