今朝、岩永さんから素敵なメールをもらった。前々回の記事「リア王」に対する返信である。このメールがあまりに素晴らしいので、ご本人の許可をえて、アップさせてもらうことにした。ほんの少し編集してあるが、ほぼ原文のままである。
渡部 先生 こんにちは。
先日は、ロンドンで感動の再会ができて、とてもうれしかったです。まったく予定外でしたから、本当にご縁があるのだなと思いました。(中略)
シアターライターの知人がいうには、「リア王」が今、英国が誇る最高のキャストと、最高のスタッフが作った芝居、というのですから、見られただけ、本当によかったです。
私は、先週の金曜日、ブダペストのリスト音楽院の大ホール(※欄外ご参照)で、小林研一郎さんが指揮をするコンサートに行くことができました。完売だったのですが、偶然、売れ残りのチケットを1枚だけ、コンサート開演前に手に入れることができました。なんとラッキー!小林さんは、ハンガリーで指揮者として活躍して40年。今回は、リスト音楽院をはじめ、ハンガリー全国で計8回くらい公演をされます。
いかにハンガリーの方々に敬愛されているかを、体感する場となりました。何せ、マエストロが入場するなり、大きな拍手。社会主義時代から残る、あの、手拍子を合わせたような、シャンシャンという拍手がなかなかやまない。開演前なのに。
そして、マーラーの交響曲第二番を一気に演奏。大合唱団も入って、すごい迫力。客席が振動するのを、文字通り体感しました。終演して、一瞬の間のあと、われるような大拍手と二階席はスタンディング・オベーション。ところが、マエストロは、低姿勢で、決して指揮台に上がって拍手をお受けにならない。すべては楽団のおかげと、部署ごとに丁寧に指さし、立ち上がり、拍手を浴びることを促すのです。
自分は決して前に出ない・・・そのような気持ちと取組姿勢が、より一層、楽団員と聴衆を感動させるのか、どんどん拍手が盛り上がり、とうとう、舞台の正面、ちょっと高いところの特別席にならんでいた合唱団から色とりどりのガーベラの花がマエストロめがけて次々と投げられる!舞台に落ちた真っ赤なガーベラを拾い、第二バイオリン奏者に優しく手渡す小林さん。
日本人であることが、マエストロのおかげで、少しだけ誇らしげに感じられた、そんな気持ちの良いコンサートでした。
こんな気持ちの良いステージを、私も、仕事を通じて、観客の皆様に味わっていただけたらいいな、とそんな思いを抱いて家路につきました。
いやはや、脱線してしまい、失礼しました。旧あかり座の皆様に、どうぞよろしくお伝えください。
岩永絵美 拝
※リスト音楽院の内装は、昨年の冬、3年の歳月をかけて、修復、見事に美しくなりました。以下、オープニング時のコンサートをご覧いただくことができます。約100分もありますが、前半の6番目あたりに、コダーイ作曲の「Evening Song」(合唱)があります。これは、いい曲だと思いますので、お時間のあるときにどうぞ。
※最後に、今年は、V4+日本交流年に指定されています。Visegrad 4 は、ポーランド、チェコ、スロバキア、ハンガリーを指します。なので、私のオフィス(国際交流基金ブダペスト日本文化センター)でも、がんばってイベントを企画しています。今は、ちょうどぺーチで、「東北の美しい手仕事展」を開催中です。