第12回高校生プレゼンフェスタ(2)

ウォームアップ 「あっちこっち」

ウォームアップ 「あっちこっち」

昨日、はじめて出会った高校生たちがグループ・プレゼンテーションに挑戦する「第12回高校生プレゼンフェスタ」(早川則男運営委員長)があった。会場の跡見学園中学高等学校は都内屈指の伝統校で、あいさつはすべて「ごきげんよう」、桜の紋が校章である。花曇りの暖かい一日とあって、夕方校舎をでるころまでに玄関前の桜がほぼ満開になった。

午前10時半開始のプログラムは、大きく3つに分かれている。A:ウォームアップ・アクティビティ+ガイダンス(1時間)、B:昼食をとりつつプレゼン準備(2時間)、C:プレゼン本番+振り返りと講評(1時間半)である。

チーム構成もプレゼンのテーマも、生徒は当日に知らされる。その直後から、2時間の準備で5分以内の発表をつくることになる。発表形式は全身をつかう演劇的手法だ。こうした強い制約のもとで創造のプロセスを味わうプロジェクト、それが「プレゼンフェスタ」である。おそらく高校生の交流事業として、日本ではじめての取り組みだろう。

パイロットケースと位置づけた今回は、東京・埼玉の8つの高校から44人(男女 1年生~3年生)が参加してくれた。カナダ、オーストラリア、フランスなどに留学した経験をもつ人がかなり入っているし、外国籍の人もいる。

この44人を各校混成の8チーム(各5~6人)に分ける。提示したテーマは、「かっこいい大人になるには」と「若者よ、海をわたれ!」のどちらか1つ。図書室もコンピュータ室も完全開放だから、自由に発表会場とのあいだを移動しながらプレゼンをつくる。

まったくもって楽しい発表だった。生徒から「かぶる発表がひとつもなかった」と驚きの声があがったように、彼らの考えた論点も状況設定もそれぞれ違っていたし、発表形式もスキット、ニュースショー、ディベート・ドラマと多彩だった。

跡見学園の桜 朝の風景

跡見学園の桜 朝の風景

なかでも「かっこいい大人になるには」をやったDチームの洗練ぶりが光った。彼らは、かっこ良さのポイントを4つあげる。ダンディーさ、他人にない独自の能力、教養、知識である。

面白いのは振り分けで表現する工夫だ。下手にならんだ3人がそれぞれのポイントをめぐって会話すると、観客に背を向けて立っていた上手の3人が突如ふりむき、どのポイントもそれだけでは「かっこ良さ」の十分条件にならないことをショート・スキットで演じてみせる。これら4つを総合する人間的経験こそ大切、が結論だ。「それをめざすのはいつ?」「今でしょう」と話題のCMをパクって全員が唱和し、会場がワーッと沸いた。

講評で「次の機会にまたやってみたい?」と訊くと、参加者のほぼ全員が躊躇なく手を挙げた。相当な充実感、達成感だったようだ。運営委員の振り返りでも、中原道高さんや田ヶ谷省三さんから、これまでの10年間の蓄積がすべて活かされた結果ではないか、という意見がでた。わたしもそう思う。

新企画の成功を支えているのは、教師側のチームワークの成熟である。周到に準備されたウォームアップ・アクティビティ、見事なデモンストレーション、柔軟なプログラム管理、こまやかな会場校の心配りなどによくそれが示されている。

これらと、引率メンバーのひごろの教育活動とが相まって、生徒が安心して自分をだせる表現空間が生まれたのである。かくして高校生意見発表会が新しいステージに入った。

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