きょうから後期の卒業論文指導がはじまった。いつも進捗状況の報告にさきだって、夏休みの報告をしあうのだが、ことしはなんといっても、木村敬一くんの活躍が話題の中心だ。ゼミのみんなは、ロンドンまで応援にいった津田くん、石塚さんのはなしと、当事者の木村くんの体験談の両方をきけるので、状況を立体的に知ることができる。
世界で3番目の記録をもち、メダル獲得の有力種目といわれた自由形でメダルをのがした木村くんだが、そのあとの活躍がめざましく、まず平泳ぎで銀メダル、さらにバタフライで銅メダルをとった。
自由形のときの木村くんは、1万7千人の観衆がはなつ異様な熱気、さらには応援にこたえなければという責任感におそわれて、ガチガチの緊張状態だったらしい。スタート前、じぶんに活を入れるために胸を叩くと、その叩いた手がしびれるように震えたという。そろいのTシャツで応援する側も同じで、4年間いっしょに泳いできた津田くんなどは、レースが近づくにつれて、「緊張する、緊張する」といいながら、しきりに自分のからだを叩いている。
自由形の結果は、100m、200mともに5位入賞。タイムはけっして悪くない。大会で急成長した選手がいくにんもでてきたことで、この順位になっている。われわれにはみせないものの、木村くんのショックは相当なものだったらしい。選手村にかえってから、それまで食べずにきたハンバーガーを焼けぐいし、練習量もがくんと減らした。
これがかえってよかったことになる。というのも、いったんリフレッシュし、ひらきなおってのぞんだ2種目で、メダルをとることができたからだ。これらはもともと、個人メドレーにむけた調整種目の位置づけだったというから面白い。津田くんたちは、成田に帰着した直後に「メダルとったよ」という木村くんのメールをうけとって、大はしゃぎしたという。
もってみるとメダルは思いのほか大きくて重い。今回の木村くんのがんばりは、ゼミ生のこんごをも大いに励ますものとなった。