藤光先生宅を訪問

ロンドンの藤光先生のお宅で、施さんの手料理をごちそうになった。テーマは「初秋」。中華料理をベースに、和洋中が融合した独特の世界観をもつ全7品の料理だ。

パリでもそうだったが、地元食材を徹底的に探索し、そこから料理のイメージを膨らませるらしい。

今回も、地元のエビに上海から持ち込んだ白茶の風味をきかせて仕上げた料理、西洋のクワイと数々のキノコをとりあわせた炒め物、カモ肉のローストに味噌ベースのソースをあわせた一皿などが次々に登場する。デザートには手作りのコンポートがつく。いずれも絶品である。

たった一人の来客のために料理に名前をつけ、手書きのメニューを添える。茶の心に通じるもてなしである。

実は、ロンドンに落ち着いた途端、日ごろの疲れがドッと出て、食欲までなくしていた。

ところが、施さんのお料理を食べ進むうち、自然に身体が整ってくるように感じるから不思議である。

今朝から、食欲もちゃんと戻っていた。

にほんご人フォーラム2019ベトナム

昨日、ロンドンの宿についた。気温は18度、冷たい雨が降っている。「大変危険な暑さ」という日本とは20度近い開きがある。

8月の初めは、フォーラムの仕事でダナンにいた。アジア6か国の生徒が、「ふるさと」をテーマに演劇的発表を創る。

マレーシア以来の参加だが、さすがに2012年から続く事業とあって、プロジェクト自体が成熟しているで驚いた。4つの混成チームを、ベトナムの先生たちがファシリテートしている。

ご朱印船の遺跡が残る世界遺産の街・ホイアンでの取材が組み込まれている。観光客をターゲットにした語学学習もさかんらしく、小学校の生徒・先生に英語でインタビューされた。

久しぶりに横田先生、金田先生とのチームが復活したのも嬉しいことだったが、今回審査をご一緒したベトナム国立文化大学のチャン先生から、現地の教育事情を詳しくうかがえたのも貴重な経験になった。

第14回獲得研夏のセミナー

2カ月間、ブログのアップもままならず、そのまま夏に突入してしまった。忙しさがいまも続いている。

8月7日(水)のセミナーに合わせて、6日にベトナムから帰国した。

それにしても、8本のワークショップは壮観だった。実力も経験も十分なメンバーばかりだから、参加した方々の満足度ももちろん高い。

このままのパッケージで全国行脚をしたら、相当なインパクトになりそうだ。

午前の全体会では、若手の2人-小菅さんのウォーミングアップ、小宅さんの実践報告-が大活躍。これまで壮年のメンバーを中心にプログラムを組んできたが、そうか、教育学科の卒業生が活躍する時代になったんだ、という感慨があった。

今回は、ICU高校の卒業生・ペレラ柴田奈津子さん(ロンドン大学)と数10年ぶりの再会、人生の出会いの不思議をあらためて実感したセミナーでもあった。

間もなく欧州出張にでるので、今夏はとりわけハードな日程になっている。

松の表情

ゴヨウマツと臥竜の松(クロマツ)を透かしてもらうと、上の写真のような表情が姿をあらわした。現代アートのオブジェを思わせる迫力である。

剪定によってゴヨウマツの存在感が格段に高まった。わけても長大な枝がみせる表情の多彩さに驚かされる。

臥竜の松に注目してみると、地面から左手上方に伸びあがった幹が、いったん大きくうねって右手の高みをめざしているように見える。なるほど頭をもたげて上空に飛びあがらんとする龍の姿である。

時間をかけて眺めているうちに、隠れていた庭の構造が次第にはっきり見えるようになってきた。2本の松は、もともと一体でデザインされたものだろう。

庭を眺めることは、古人との対話であり、時間との対話であり同時に一種の謎解きでもある、そんな風に感じはじめている。

松の剪定

東庭の手入れが一段落し、作業の重心を南庭の手入れに移している。南庭は、林立する松が主役になる庭だから、ここから先はプロの力を借りるほかない。

南庭には古木が多い。私の趣味とはちょっと違うが、幹や枝の尋常でない撓め方のせいで、まるで巨大な盆栽みたいな姿になっているものもある。ゴヨウマツと臥竜の松の間からみる上の写真のキャラボクもそうだ。(東側から)

反対の西側から見ると、こんな姿をしている。おそらく臥竜の松と同じころの庭師の仕事かと推測しているが、地面からでた幹がすぐに二股にわかれ、両方ともが、まるで大蛇のようにとぐろを巻いてから上に伸びあがっている。

今回、樹木の自然な姿を大切にする福岡造園の福岡徹さんにゴヨウマツの剪定をお願いしたことで、南庭の面目が一新した。

ゴヨウマツと臥竜の松(クロマツ)の2本を一体に見立て、東西にゆったりと枝を伸ばす姿で仕立ててくれたのだ。混合う枝を透かし、10本あったゴヨウマツの支え木もあらかた撤去して、なんとも清々しい景色になった。

自分の好みにあう仕立て方がようやく見つかった気分である。

高木の伐採―その後

秋田に出張があったので、それを機会に、まずは屋敷の外周道路沿いの高木を伐採した後がどんな様子になっているのか、見てまわることにした。

するとどうだろう。高木のかげになってすっかり忘れられていたような木々が、いまは燦燦と陽の光をあびて存在感を発揮しはじめている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

冬枯れの気配を残していた西庭のモミジの葉っぱも、すっかり緑の色を深くしている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2か月前の庭の様子とはまるで別物である。それで、こちらが多忙を極めていたほんの2カ月の間に、これほど早いスピードで季節が移ろうのかと、ちょっと不意をつかれた感じになった。

ラッセルスクエア周辺

地下鉄のラッセルスクエア駅は、ロンドン大学の最寄り駅だが、私にとっては書店のディロンズに通った駅という印象が強い。

1990年代は、いまよりも円高だったから、本をたくさん抱えて地下のカウンターにいき、そこで箱詰してもらった本を、数か月後に船便で受け取った。当時のディロンズもいまは書店ウォーターストーンズに変わっていて、地階にあるカフェにだけその名が残っている。

書店までの経路だが、駅の改札をでてからラッセルスクエア公園を左手にみて、まず交差点をわたる。(上の写真:ラッセルスクエア)

そのままワンブロックばかり北上すると、もう一つの公園タビストックスクエアがあらわれる。このあたりには○○スクエアという名の公園がいくつもある。(下の写真:タビストックスクエア 背中はガンジー像)

タビストックスクエアの前で左折し、まっすぐ道なりに進むと、やがて書店のビルがみえてくる。

今回もそうだったが、タビストックスクエアでよくリスを見かける。10年以上前になるだろうか。早春の午後に、時ならぬ雪のふる公園を通ったら、一匹のリスがひょっこり目の前に姿をあらわして、一定の距離を保ったままどこまでもついてきたことがあった。

教育や演劇関係だけでなく、いろんなジャンルの本を船便で送ったが、そのなかに植物やガーデニングの本も含まれていた。

20年以上も前からイギリスの庭づくりに強い関心があったとは思えないのだが、ガーデニング関係の大型本がいまも書棚に鎮座していて、最近になって、それらをよく見返すようになってきた。

旧角川邸、旧大田黒邸の庭

ほとんど外出しないまま大型連休を終えたのだが、思い立って、連休の終盤に荻窪駅の南口にある角川庭園・幻戯山房と大田黒公園を訪ねた。どちらも杉並区が管理している。

旧角川邸は、細部まで神経の行き届いた近代数寄屋建築(加倉井昭夫設計)と庭園が融合して、庭屋一体、きわめて居心地の良い空間になっている。

かつては眼下に畑が広がる風景だったというが、南にゆるやかに傾斜した段丘を活かした明るい雰囲気の庭である。

庭の広さとそれに見合った小ぶりな植栽のバランスがみごとで、なんとも言い難い洗練さがある。わたしは住み手である角川源義という人の美意識にちょっとふれられた気がした。

同じ個人住宅だが、旧大田黒元雄邸は角川邸とは対照的なたたずまいで、広い邸内に林立する松、モミジの巨木が圧巻である。箱根あたりの庭にありそうな、豪壮な石組みと立派な池泉もそなえている。

ただ、若き日をヨーロッパで過ごした人の好みだろう。建物の前に広がる景色が広い芝生になっているせいで英国の風景式庭園を思わせから、どちらかといえば折衷様式のテイストがある。

この大田黒邸のアカマツ群は、見上げると首がいたくなるほどの高さで林立している。余りの迫力に最初こそ驚くが、そのうち、なるほど林立する幹そのものが見どころになる庭もあるのだと、納得させられた。

角川邸で時ならぬ雷雨にあい、長い雨宿りになってしまったが、それもまた風情があって楽しかった。

空間のバランス

この冬、クレーン車を使って秋田の高木を伐採してもらった。外周道路に面したケヤキやヒバ28本が対象である。

200本のうちの28本だから、本数にするとほんの1割だが、効果のほどは劇的で、こんなに変わるかというくらい屋敷の空気が一変した。一言でいえばスカッと開けた空間になった。

(左側の門柱の横に、今回伐ってもらったヒバの切り株がみえる)

そこで今回は、春の到来を待ちかねて、いつもより早く屋敷の手入れにでかけ、庭の入り口にある門柱の足元に敷石をしいてみた。

もともとこのアプローチは、いまの家に建て替わったとき、両親が茅葺屋根時代の中門を再利用して築いたもので、正面には自然石を刳りぬいた蹲が据えてある。

ほんの小さな改修だが、これまで庭の現状維持に多くのエネルギーを使ってきたことを考えると、新しい変化の第一歩ということになる。

秋田の庭の手入れをしていると毎回何かしら発見がある。今回は、芽吹きの前とあって、幹から枝先までクッキリ見えるから、いやでも木々の関係性に目がいった。複数の高木が構成する空間のあり方が気になったのだ。

訪問者がわが家の玄関に立つと、母屋の屋根越しにツガ、アカマツ、カエデ、山桜、ケヤキ、杉、ヒバの高木の先端部分が横一線に並んでみえる。いずれも西庭を構成する木々で、この奥行きの深さがわが家の景色の特徴といっていい。

(屋敷の西南側から築山越しに土蔵・北方向を見たもの)

上の写真がそうだが、実際に西庭の奥に足を踏み入れてみると、上述の木々が横一線に並んでいるのではなく、タップリ空間を取って互い違いに配置されているのが分かる。

ただこれだけの高木になると、それぞれの樹木がより大きな空間を占有する必要がでてくる。その結果、中空を分け合うといえば聞こえがいいが、空間を奪い合ううちに微妙なバランスが生まれ、それが景色になっている。

上の写真のアカマツがその典型で、見上げる幹の途中から、ほぼ垂直といっていい角度で真横に伸びる長い枝の存在を確認できる。日の光を求めて、まるでアカマツが自らの意志でまっすぐに腕を伸ばしているかのような姿だ。

こんな具合で、何気なく眺める庭の木々から生態系の不思議が垣間見えてくる。世界の姿を凝縮したものが庭園だと思ってきたが、近ごろますますその感を強くしている。

第18回高校生プレゼンフェスタ

3月26日に江東区の深川江戸資料館で、第18回高校生プレゼンフェスタ「江戸・東京のくらし再発見」があった。今回も8校から集まった30人の高校生が、6チームに分かれて半即興型のプレゼン作りに挑戦した。

深川江戸資料館は年間10万人(うち海外の旅行者1万人)の来場者がある下町巡りの人気スポットである。

この施設との連携は3回目になる。さすがにここまで経験を重ねると、フェスタを運営する獲得研と資料館の間の意思疎通もきわめてスムーズである。

もともと高校生の来場者比率が低いこともあり、その分生徒たちの熱心な反応が、案内してくださるガイドの方たちにも新鮮に映るのだという。

獲得研の側から見ると、博学連携のこのプログラムは、インターハイスクールの交流活動という側面とプログラムを運営する教員自身の研修プログラムの側面という2つの要素を含んでいる。

教員研修の視点からみると、今回も「拍手回し」を創造的に応用した宮崎充治氏(弘前大学)のウォーミングアップ、参加者を巻き込んでプログラムを解説する藤牧朗氏(目黒学院)のガイダンスに、新工夫が施されていた。

教員デモンストレーションは、落語「長屋の花見」をアレンジしたニュースショー形式の発表である。両角桂子氏(所沢北高校)の脚本に、卵1個が現在の価格で400円相当だったという情報などが盛り込まれていて、なるほどと感じ入った。

参加生徒の特徴ということでいえば、もっとも緊張する集合のときから、もう和やかで柔らかい雰囲気を醸しだしていたことがある。

また発表形式の特徴としては、クイズの要素を入れて観客を巻き込む工夫がとくに目立った。似通った形式が多い分、それぞれのチームが発表空間をどうデザインするのか、そのバリエーションが際立ってきて、それも面白かった。

資料館側の全面協力もあって、ハンズオン資料が、発表本番で例年になくたくさん使われたのも今回のフェスタの特徴である。

これまでプレゼン・フェスタの運営にかかわる様々な知見を蓄積してきたが、今回は、例えばイギリスであかり座公演をやるときにこれまでの経験をどう活かせるのか、そんなことに考えながら見ていた。

つまりは日本で開発したプロジェクト学習の方法を海外で実践してみるということなのだが、その実現は、プレゼン・フェスタのもつ可能性に今までとは違った角度から照明をあてることにつながるのではないか、そんな風に感じたことだった。