書評(2)

『学びへのウォーミングアップ 70の技法』
渡部淳+獲得型教育研究会(編)(旬報社)

多文化共生の時代だ。コミュニケーション力育成が時代の要請だ。

これからの学校教育は、教科学習とコミュニケーション力育成の二本立てが必要条件になるだろう。そのためには、どんな教育が必要なのだろうか。当然ながらコミュニケーション力を育てるには、コミュニケーションを盛んにする教育を心がけねばなるまい。自由な雰囲気で話し合いができる集団を育て、正解が一つとは限らない課題をみんなで解決していくような学習が必要だろう。その前提として「仲間との交流を楽しみ」「協力と集中を楽しみ」「躍動と創造を楽しむ」集団作りが求められる。

渡部淳氏と獲得型教育研究会で出版された「学びへのウォーミングアップ 70の技法」には上記の三つのステップに対応した活動の具体例が紹介されている。活動の方法を紹介するだけでなく、「授業の前に」「授業の中で」「授業の後で」といった活動の段階毎の配慮事項や、予想されるさまざまな疑問について、きわめて具体的な解説が述べられている。さらには、これらの活動を自在に使いこなすためのポイント、基本的な考え方などについても言及されている。

中心となるのは、70の具体的な方法の紹介であって、その一つ一つが、じつに楽しい。学習者が抵抗なく活動に入っていける条件は、その活動が、ニコッと笑って入っていける楽しさを内包していることだろう。おもしろくもない事を指示されるとしたら、しらけるだけだろう。コミュニケーション力育成の最初のステップとして好適である。以下、紙面の尽きるまで実例を。

  • 「後出しジャンケン」
    リーダーがジャンケンで出したものに勝つように、後からみんなで出す。

  • 「拍手まわし」

    丸くなって、最初の人の拍手をリレーのバトンのように回す。

  • 「白身と黄身」
    三人一組で卵を形作る。二人が白身で、向かい合い両手をつなぐ。残る一人が黄身で、二人の手の間に入る。鬼は「白身・黄身・爆発」のうち、どれかを選んで言う。黄身と言われたら、黄身の人だけが別の卵に移動する。卵になれずに取り残された人が次の鬼になる。「白身」と言われたら白身の人が移動する。
蓑田正治氏
2011/11/25「児童演劇」No.612, p.8