秋田往来」カテゴリーアーカイブ

晩秋の庭

秋田で講演があったついでに、庭の秋色をいっとき楽しんだ。

土蔵の横にある豆柿は、毎年、初雪が降ると甘くなる。不思議なことに、甘くなった瞬間にムクドリの群れがくる。そしてほとんど一日で食べ尽くす。

モミジはあらかた落葉していたが、まだ何本か散り残っていて、透明感のある黄色を楽しむことができる。

南庭には、イチョウのはっぱが一面に散り敷いている。

松葉の上に散り敷いた黄葉をみると、いつも干菓子の吹き寄せを思い出す。

西庭に一本だけ紅葉したカエデが残っていて、それが庭の主役になっている。

もう少し時間があれば清々した気分をゆっくり味わえるのになあ、といつも思うのだが、こればかりは仕方がない。

松の表情

ゴヨウマツと臥竜の松(クロマツ)を透かしてもらうと、上の写真のような表情が姿をあらわした。現代アートのオブジェを思わせる迫力である。

剪定によってゴヨウマツの存在感が格段に高まった。わけても長大な枝がみせる表情の多彩さに驚かされる。

臥竜の松に注目してみると、地面から左手上方に伸びあがった幹が、いったん大きくうねって右手の高みをめざしているように見える。なるほど頭をもたげて上空に飛びあがらんとする龍の姿である。

時間をかけて眺めているうちに、隠れていた庭の構造が次第にはっきり見えるようになってきた。2本の松は、もともと一体でデザインされたものだろう。

庭を眺めることは、古人との対話であり、時間との対話であり同時に一種の謎解きでもある、そんな風に感じはじめている。

松の剪定

東庭の手入れが一段落し、作業の重心を南庭の手入れに移している。南庭は、林立する松が主役になる庭だから、ここから先はプロの力を借りるほかない。

南庭には古木が多い。私の趣味とはちょっと違うが、幹や枝の尋常でない撓め方のせいで、まるで巨大な盆栽みたいな姿になっているものもある。ゴヨウマツと臥竜の松の間からみる上の写真のキャラボクもそうだ。(東側から)

反対の西側から見ると、こんな姿をしている。おそらく臥竜の松と同じころの庭師の仕事かと推測しているが、地面からでた幹がすぐに二股にわかれ、両方ともが、まるで大蛇のようにとぐろを巻いてから上に伸びあがっている。

今回、樹木の自然な姿を大切にする福岡造園の福岡徹さんにゴヨウマツの剪定をお願いしたことで、南庭の面目が一新した。

ゴヨウマツと臥竜の松(クロマツ)の2本を一体に見立て、東西にゆったりと枝を伸ばす姿で仕立ててくれたのだ。混合う枝を透かし、10本あったゴヨウマツの支え木もあらかた撤去して、なんとも清々しい景色になった。

自分の好みにあう仕立て方がようやく見つかった気分である。

高木の伐採―その後

秋田に出張があったので、それを機会に、まずは屋敷の外周道路沿いの高木を伐採した後がどんな様子になっているのか、見てまわることにした。

するとどうだろう。高木のかげになってすっかり忘れられていたような木々が、いまは燦燦と陽の光をあびて存在感を発揮しはじめている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

冬枯れの気配を残していた西庭のモミジの葉っぱも、すっかり緑の色を深くしている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2か月前の庭の様子とはまるで別物である。それで、こちらが多忙を極めていたほんの2カ月の間に、これほど早いスピードで季節が移ろうのかと、ちょっと不意をつかれた感じになった。

空間のバランス

この冬、クレーン車を使って秋田の高木を伐採してもらった。外周道路に面したケヤキやヒバ28本が対象である。

200本のうちの28本だから、本数にするとほんの1割だが、効果のほどは劇的で、こんなに変わるかというくらい屋敷の空気が一変した。一言でいえばスカッと開けた空間になった。

(左側の門柱の横に、今回伐ってもらったヒバの切り株がみえる)

そこで今回は、春の到来を待ちかねて、いつもより早く屋敷の手入れにでかけ、庭の入り口にある門柱の足元に敷石をしいてみた。

もともとこのアプローチは、いまの家に建て替わったとき、両親が茅葺屋根時代の中門を再利用して築いたもので、正面には自然石を刳りぬいた蹲が据えてある。

ほんの小さな改修だが、これまで庭の現状維持に多くのエネルギーを使ってきたことを考えると、新しい変化の第一歩ということになる。

秋田の庭の手入れをしていると毎回何かしら発見がある。今回は、芽吹きの前とあって、幹から枝先までクッキリ見えるから、いやでも木々の関係性に目がいった。複数の高木が構成する空間のあり方が気になったのだ。

訪問者がわが家の玄関に立つと、母屋の屋根越しにツガ、アカマツ、カエデ、山桜、ケヤキ、杉、ヒバの高木の先端部分が横一線に並んでみえる。いずれも西庭を構成する木々で、この奥行きの深さがわが家の景色の特徴といっていい。

(屋敷の西南側から築山越しに土蔵・北方向を見たもの)

上の写真がそうだが、実際に西庭の奥に足を踏み入れてみると、上述の木々が横一線に並んでいるのではなく、タップリ空間を取って互い違いに配置されているのが分かる。

ただこれだけの高木になると、それぞれの樹木がより大きな空間を占有する必要がでてくる。その結果、中空を分け合うといえば聞こえがいいが、空間を奪い合ううちに微妙なバランスが生まれ、それが景色になっている。

上の写真のアカマツがその典型で、見上げる幹の途中から、ほぼ垂直といっていい角度で真横に伸びる長い枝の存在を確認できる。日の光を求めて、まるでアカマツが自らの意志でまっすぐに腕を伸ばしているかのような姿だ。

こんな具合で、何気なく眺める庭の木々から生態系の不思議が垣間見えてくる。世界の姿を凝縮したものが庭園だと思ってきたが、近ごろますますその感を強くしている。

冬支度6

(上の写真は西庭方向。苔が徐々に復活してきた)

帰省が遅れてしまったせいで初雪に遭遇し、難渋した。和室のフローリング化と建具の移動をしてもらったこともあり、初日の作業を屋内中心に切り替えることにした。

2日目と3日目の秋田は、気温こそ10度前後と低かったが、好天に恵まれて、思いのほか庭仕事が捗った。

東庭の間伐をほぼ終えて、いまは南庭と西庭の枝打ちにかかっている。とはいえ、南庭は五葉松など松の木が中心の庭である。素人にできることは限られている。

一方、西庭はモミジが中心の庭で、高木が10本ほど横に並んでいる。こちらも余り手をかけないまま、ここまできてしまった。

(上の写真。2007年、父から引き継いで間もないころのもの)

今回、この写真の背景にある築山のヒバを伐採したら、背後のモミジが一本、幹から根元まで、はっきり見えるようになった。

それで、間伐というのは樹木に満遍なく日の光をあてる作業と心得てきたが、庭の骨格を明瞭にする作業でもあるのだ、と改めて気がついた。

秋田の屋敷の管理

9月中旬の4日間、秋田に帰省した。秋田から戻るのと同時にPCがダウン、復旧するまでのほぼ1か月間、まるで仕事ができなくなって難渋した。

(上の写真。この景色で「秋田に戻った」という気分になる。)

帰省にあわせて、和室の一つをフローリング化する工事をしてもらった。ちょっとした思いつきで始めたプランだが、これが思いがけない効果を発揮し、古い家がそれなりにモダンな雰囲気になるので面白い。

あわせて立木の伐採計画を前に進めることにした。前回の調査で、屋敷内に都合200本の高木があることが分かっている。

これを徐々に間引いていくのだが、まずはこの秋、外周道路に面した15~20本ばかりの高木を選んで伐採してもらうことにした。クレーン車を使って3日がかりの作業になるらしい。

(上の写真は、伐採予定の木に目印をつけているところ)

さあ、どのくらい景色が変わるものなのか、こちらも楽しみである。

秋田の庭

ゴールデンウィークの前半は秋田の庭、後半は所沢の庭の手入れをしよう、と大雑把な予定をたてている。

秋田では好天にも恵まれ、丸4日間、気分よく作業ができた。父親から屋敷を引き継いで15年たつが、こんなに集中して作業をしたのは初めてである。

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いつも庭を7つのブロックに分けて作業をしていて、今回は、東側のブロックに集中的に手を入れることにした。

(上の写真は、玄関からみた東南の庭方向)

ちょっと気持ちにゆとりがある分、屋敷の測量と樹種などの調査に半日分の時間をとった。

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調べて分かったことの一つは、松、モミジ、ヒバ、ケヤキなどの高木の数が意想外に多かったことだ。その数ざっと100本。さらに西側にある土蔵の背後の杉林にも、数えてみたら100本の杉が植わっている。なるほど鬱蒼としていたわけだ。

こうして様子がわかったのは良いことだが、ではこれからどうマネジメントをしていくべきなのか、逆に、当惑の度が増してしまう結果にもなった。

これまでの管理計画を練り直さねば・・・、と思い始めている。

冬支度5

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秋田の庭であいかわわらずヒバと格闘している。今回は、直径15センチほどの立ち木を、20本ばかり間伐し、直径30センチ近い大枝の枝打ちもしたから、作業を終えたときには、まるで屋敷中が戦場のようなあり様になった。

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千葉から合流した妹が電動チェーンソーをふるって奮闘したのだが、若いころ合気道で鳴らしただけあって、身体操法が見事である。重心の移動がスムーズなのだ。

おかげでこんなに広い庭だったのかと思うほど、屋敷まわりがスッキリ明るくなった。鬱蒼と茂ったツバキを切ったら、地面から、実におだやかな円相の庭石が顔をだした。陶芸の辻清明さんの代表作「信楽大合子 天心」の頂上部を一回り大きくしたような、みごとな丸みである。

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一方、私の方はというと、よほど仕事の段取りに気をとられていたのだろう。上着とズボン一式を、宿におき忘れてしまったらしい。おかげで帰京しようとしたら、ジャージに黒の革靴といういささか間抜けな格好ができあがった。

さてどうしたものか。かといって、慌てて洋服をかうのも業腹である。そこでスポーツ関係者の方々には申し訳ないことだが、心のなかで「スポーツ大会の引率の帰りでこんな格好なんです」という勝手な設定をつくり、その気分のまま新幹線に乗り込むことにした。

帰宅した私の姿をみたワイフが、お腹をかかえて笑ったことは言うまでもない。

秋田の庭仕事

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5月の秋田は、爽快そのもの。微風で仕事の汗もおさまるから、このシーズンの庭仕事が大好きだ。

ところが今回はあいにくの雨模様。千葉から合流した妹と、雨合羽を着て作業する羽目になった。

DSC00012秋田

実生から大きくなったオンコを伐採したり、ヒバの高木の枝打ちをしたりしたので、東庭がずいぶん明るくなった。

今回は、電動チェーンソーが大活躍、私は給油式のものしかもっていなかったが、妹は千葉の庭でもう使っているという。ハンディなだけでなくパワーも十分ある。

二人でやると作業能率がぐんと上がるので、ついつい頑張りすぎて足腰にきたが、楽しい作業になった。