研修会・講演」カテゴリーアーカイブ

津山再訪

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獲得研夏のセミナーに先立ち、8月3日から5日まで、津山市を再訪した。岡山県内の商業高校が参加する「マーケティング分野生徒対象研修会」のためだ。(上は、津山高校、下は4校連携の発表会)

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出会ったばかり生徒たちが、チームを組んで城西・城東地区のフィールドワークにでかけ、そこでえた情報を編集して、その日のうちに観光プランを発表する。この半即興プレゼンのコンセプトは去年と同じだ。

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ただ、今年が会場校となる槇野滋子先生(津山商業高校校長)の最終年度ということで、ひときわ力の入ったプログラムだった。

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おかげで、重要文化財になっている津山高校のホールで、市内4校の生徒たちが地域創生をテーマにつくった討論劇を観たり、鶴山公園で石垣の素晴らしい景色をじっくり味わったりできた。

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今年の特徴は、委員だけでなく各校の引率の先生たちが大活躍したことだ。猛暑のなかを生徒たちの取材に同行し、発表のコメンテーターの役も引き受けてくれた。

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ふり返りの時間が圧巻だった。半即興のプログラムにして、こんな深いところまで考えられるものなのか、と関係者一同仰天させられたのだ。居合わせた教師はみな、これこそが教師冥利だ、と感じたことだった。

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秋には今回参加した生徒たちが岡山市内で再会し、コンテスト形式で発表する。はたしてどんな成長を見せてくれるのか、いまから大いに楽しみである。

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パリ日本文化会館で研修会

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7月6日(木)、7日(金)の2日間、パリ日本文化会館で、国際交流基金が主催する「2017年度 欧州日本語教育研修会」の講師をつとめた。参加者は、欧州5か国(フランス、イギリス、ドイツ、オランダ、イタリア)の先生たちで、各国の大学で日本語を教えている方たちが主流である。

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会館の最上階にあるレセプションルームは、見晴らしがよく、ワークショップをするのに最適の空間である。ベランダから、エッフェル塔も間近にみえる。

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研修の共通テーマは、「異文化間リテラシー」×「アクティブ・ラーニング」×「学びの全身化」。6つの大きなセッションに、それぞれ講義とワークショップが入るかなりハードなプログラムになった。せっかくの機会とあって、「学びの共同化」を実感できるウォーミングアップ、教育プレゼンテーション、ドラマワークもたっぷり経験していただいた。

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セーヌ川をはさみ、シャイヨー宮を背にして発表準備をしている様子など見ていると、なるほどここはパリである。

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参加者の方々の意欲は相当なもので、すぐにも授業に取り入れたい、という意気込みがひしひしと伝わってくる。研修会の企画にあたった藤光由子先生(日本語教育アドバイザー)のコーディネート力の賜物である。

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予め3本の論文を読んでコメントを提出する、異文化間リテラシーを開発するための授業プランを提出するなど、事前課題をタップリこなしてから本番を迎えている。参加者の方から「反転学習の機会だった」というコメントがあったが、密度の濃い2日間は、永い助走期間があってはじめて実現したものだった。

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何しろ日本語指導の最前線で奮闘する方々ばかりである。発言の内容に、それぞれのお国柄や教育事情がおのずと反映されていて、私にとっても学ぶことが多く、なにより楽しい研修会だった。

アクティブ・ラーニングの大阪公演

一昨日のあかり座公演「学びの魅力とパワー!! ~教師・学習者のためのアクティブ・ラーニング入門セミナー~」(会場:クレオ大阪中央)は、日本学校演劇教育会関西支部との共催だった。この共催というスタイルは、昨年夏の那覇公演(沖縄歴史教育研究会)と同じだ。

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東京でやる獲得研セミナーに、毎年参加している大阪の南村武先生が、今回の公演の発案者にして推進役である。吉田美彦先生(関西支部事務局長)、松井きょう子先生(京都産業大学)を中心に、とてもスムーズな運営だった。

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とくに目立ったのは、獲得研の企画に初めて参加したという人の割合が高かったことだ。参加者の数が多いだけでなく、地域的にも仙台、東京、島根、岡山、広島などからの参加があり、このテーマへの関心の広がりがうかがえた。

今回は、関西側の発案で、小中教員向け、高大教員向けの各々90分のワークショップを並行して行うことにした。これは新機軸である。

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前者の担当は、桐朋小学校の宮崎充治先生。絵本『風きるつばさ』(木村祐一・文、黒田征太郎・絵)のアネハズルの気持ちと行動を、フリーズ・フレームとホットシーティングの技法を使って味わっていく。

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後者の担当は、立命館大学の武田富美子先生。生物の分類について学ぶプロジェクト「私はミミズ」(開発者:北海道大谷室蘭高校・藤田真理子先生)を、「なりきりプレゼン」の技法をつかって参加者に経験してもらう。

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大阪公演のたびに感じるのは、関西圏の参加者の表現力が高いということで、相当なハードルを設定してもサラッとこなしてしまう。さらに、宮崎さんと武田さんがもともとこちらの出身とあって、関西弁を使ったファシリテーションが板についている。

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私の基調講演「アクティブ・ラーニングと獲得型授業」の方は60分の予定を5分オーバー、例によって宮崎さんから“しゃべりすぎでしょ”とおこられた。面目ない。

本格的な振り返りはこれからだが、いまの時点ではっきりいえるのは、今回の取り組みを通じて両団体のネットワークが確実に広がったということである。

岡山版プレゼンフェスタ

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10月21日に、岡山版のプレゼンフェスタがあった。県下の商業高校9校から、津山商業高校にあつまった生徒40名が、即席で混成チームをつくり、ほんの数時間の準備時間の後で、半即興の演劇的プレゼンテーションに挑戦するプログラム。正式名称は「マーケティング分野生徒対象研修会」である。(下の写真は、徳守神社)

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東京でやっている高校生プレゼンフェスタとの違いは、①分散して津山市内にでかけ、町のなかで実際にリサーチワークを行うこと、②津山市内の「ツアー・プラン」をアピールする発表だが、形式をポスター発表と限定し、それにスキットなど様々な演劇的技法を組み合わせる方法をとること、③1泊2日の宿泊研修の形になっていること、の3点である。2日目には、各校対抗のプレゼン・コンテストがある。1日半にしては、相当に盛りだくさんのプログラムといえる。

本番の様子について、委員長の槇野滋子先生(津山商業高校校長)が以下のようにコメントしている。「開会直後に起こった地震…鳥取を震源地にした地震で、津山も震度4。会場にいた全員が机の下に潜って、激しい揺れがおさまるのを待ちました。一時は、研修会の中止も考えました。」

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だが、「地震という不測の事態さえも、2日間のドラマのエピソードに感じられるような、見知らぬ他人同士の生徒達が瞬く間にすばらしいプロジェクトチームとなっていく様、前日の学びを糧に時間と闘いながらブラッシュアップした各校のツアープランの「魂」のこもった出来…今思い起こしても胸が熱くなりそうな出来事の連続でした。」

槇野先生が“奇跡”と呼ぶ展開はどうして起こったのか。理由は色々に考えられるが、なんといっても、1年もの周到な準備を重ねて、初めての企画に意欲的に取り組んだ、運営委員の先生たちの努力に負うところが大きいだろう。

もう一つは、会場となった津山市の地の利にあるように思う。松平10万石の城下町・津山は、文化的・歴史的な資源が豊かだというだけでなく、町の大きさも高校生のフィールドワークに向いている。(下は2日目、帰っていく参加生徒のバスを見送る委員の先生たち)

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津山は、もともと蘭学の盛んな土地柄で、内科学を中心に明治期日本の医学界をリードする人材をたくさん輩出しているということも、今回初めて知った。(「珈琲」の漢字の発祥は津山、一つ上の写真は蘭学者・宇田川榕庵の「珈琲罐」を復元したもの)

来年も更にブラッシュアップした研修会を企画していると聞いた。さてどんな展開になるのか、いまから大いに楽しみである。

成蹊小学校の公開授業

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6月20日に成蹊小学校で百周年記念公開授業があった。9教科にまたがる51もの授業が公開され、獲得研の関係者も20名ほど参加した。10年毎に公開授業をしているということだが、何しろ区切りの百年とあって、学校側の力の入れ方も尋常でない。丸3年がかりで準備を進めたと聞く。

百周年にむけて整備した校舎がまた見事である。特別教室も廊下もそして普通教室と一体化した木製のデッキもすべて広々と美しい。各学年(東西南北の4クラス)が、ほどよい距離感で配置されている。

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私は「こみち科」(生活科+総合学習)の授業を9つ全部見て回った。統一テーマは、「豊かなプレゼンテーション力を育てる」である。成蹊小学校は、総合学習の長い伝統をもっていて、こみち科の語源も学校の名称「成蹊」に由来する。

獲得研の林久博先生の「おてんき裁判」(2年生)は、子どもたちが「雨ふれチーム」「お天気チーム」にわかれ、赤いマントの神様(先生)にそれぞれ訴える劇遊びだ。雨の日にチームでそとへでて、観察したことを反映した発表をつくる。

こんな発表だった。時ならぬ雨に、女の子二人があわてて雨宿り。男の子が両手を差し出して屋根のポーズ。屋根の先端からさかんに雨だれがおちてくる音。それを見あげて「きれいだねえ」とうなずきあうふたり。子どもたちの柔らかい感性が息づいている。

公開授業のあとの分科会も、参加者60人を超す盛況ぶり。授業を公開した5人の先生たちが、それぞれのねらいや成果を率直に語ってくれる。

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その場で、小学校の6年間を見通した「こみち科『プレゼンテーション力』の能力系統表」が発表された。これは、獲得研のいう「表現活動の三つのモード」(コトバ、モノ、身体)をすべて取りこんで、それぞれ学年ごとの習得課題を明らかにした表である。この「系統」と「活動・単元」を対応させて学びを組み立てる、きわめて意欲的なプランだ。

三つのモードをすべて取り込んで、しかもこれだけ具体的に展開する学習プランをまだみたことがない。研究活動を中心となって担ってきた林先生はじめ成蹊小学校の先生たちの、これまでの研鑽の深さがうかがえる。

わたしはすっかり嬉しくなって、今後の取り組みの成果も外部にむけてぜひ発信して欲しい、とお願いした。

メルボルンでワークショップ

2日間で300名を超す参加者がある

2日間で300名を超す参加者がある

JLTAV(ビクトリア州日本語教師協会)の年次大会で“Bring your Japanese ALIVE through drama”と題するワークショップをした。コーディネーターは、獲得研会員の藤光由子さん(西オーストラリア州教育省アドバイザー、パース在住)である。

カンファレンスの会場は、100年を越す歴史的建造物で、格調のある美しいホテル。そこのヘリテージ・ルームという宴会場を、ワークショップ会場に仕立てた。当日の参加者は40名ほど。日本人の先生も10人余り参加している。

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本番では、まず「全身で学ぶ」「教師は学びの演出家」など、獲得研の基本コンセプトを参加者に共有してもらい、そこから3部に分けてプログラムを展開した。

第1部は私がファシリテーター役になって、人と人が打ち解けるプロセスを経験してもらう。「後出しジャンケン」「歩いてあいさつ」など7つの技法を、シリーズ第2巻『学びへのウォーミングアップ』から選んで構成した。

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第2部の進行を、宇佐美慎吾さん(俳優、シドニー在住)が担当した。参加者がニュース・レポーター役を演じる「ロールプレイ」の紹介である。スタジオにいる慎吾さんの質問に答えて、参加者が京都で舞妓さんにインタビューしたり、公園から花見の様子を実況中継したり、といった具合に進んでいく。

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第3部は、アン・ノーマンさん(尺八奏者、メルボルン在住)による日本の民話「おむすびころりん」のストーリー・テリング。参加者みんなが協力し、鉦や太鼓、鈴やササラなどを演奏し、歌も歌えば踊りもおどる。音楽家のはずのアンさんが、踊りも演技も率先してやるから、なんとも賑やかである。

アンさんは、作曲し、小説も書き、お茶の研究書も出している

アンさんは、作曲し、小説も書き、お茶の研究書も出している

ワークショップの時間は2時間。いささか盛り込みすぎのプログラムかなあ、と心配したが、どうしてどうして。参加者のノリのよいことといったら。演技や演奏のボランティアを募ると、その場でどんどんでてきてくれる。

そんなこんなで、時間通りに進行できた。ふり返りのコメントを読ませてもらうと、さっそく自分でも取り入れたみたいという声がたくさんあって、思った以上に満足度の高いセッションだったことがわかる。

今回のワークショップは、パース、シドニー、メルボルン、東京と、それぞれ本拠地の違う4人のコラボレーションで成り立っている。国際交流基金や教師会に働きかけ、こうした企画を実現させてしまった藤光さんの熱意には、感心するほかない。

慎吾さんは、テレビ収録を終えてメルボルンに駆けつける

慎吾さんは、テレビ収録を終えてメルボルンに駆けつける

藤光由子さんと一緒にワークショップをしたことのある千葉美由紀さん(国際文化フォーラム)から、「前日は寝かせてくれない、本番20分前まで改訂の手をゆるめない。それほど準備を徹底する方ですよ」と脅されたが、やってみてなるほどと納得した。旅先にもかかわらず、相談を重ねるごとに、ちゃんと書き直したプロットや資料を用意してくれるから、プログラムの細部までどんどん洗練されてゆく。

タイルがとても美しい

タイルがとても美しい

ほっそりと優雅な身のこなしの藤光さんの、どこからそんなエネルギーがでてくるのだろうか。アジア、オーストラリアの各地で日本語定着の仕事を続けてきた藤光さんだが、今回、ご亭主が専業主夫として家事全般を担当していることを知った。二人のご子息も、ご亭主の手づくり弁当で育ったという。なるほどそうか。オーストラリア全土の日本語学習者に広がっている藤光さんの「お弁当デザイン・プロジェクト」はこうした背景から、生まれたものだったのだ。

そして数年前、中野佳代子さん(国際文化フォーラム・事務局長)と一緒に研究室に乗り込んできて、初見のわたしに「どうしても獲得研に入れていただきたいんです」と迫ったときの静かな迫力を思い出した。

獲得研の歴史でみると、おそらく今回のワークショップが、最初の「あかり座海外公演」という位置づけになっていくことだろう。こうした新しいスタイルの創造が、新しい家族像をつくってきた藤光さんによって拓かれたということに、とりわけ大きな意味があると感じている。

岡山市でのリユニオン

講演やら教員研修やらで岡山県の高校にかようようになって、かれこれ15年が経過した。前半の訪問先は玉野高校、後半は倉敷青陵高校に集中している。

吉備国分寺跡

吉備国分寺跡

今回は、高校野球の強豪で星野仙一監督の母校でもある倉敷商業で3年生の「ビジネス情報」の授業に参加した。生徒が地元企業の関係者に「なりきって」、マスカットの購入やスーパーの利用を勧めるロールプレイの授業である。

4人の発表者が教室の四隅で、顧客にむかって一斉にプレゼンするのだが、はじめてのプログラムとは思えない落ち着いた雰囲気で発表している。ベテラン先生のTT、しかも就活経験をもつ生徒の多いクラスという条件が重なっているせいだろう。

鬼ノ城西門(復元)

鬼ノ城西門(復元)

研究協議のあと、獲得研の槇野滋子先生(副校長)の運転で吉備路を案内してもらった。鳴釜の神事で知られる吉備津神社、水攻めで有名な備中高松城跡、吉備路を象徴する景観をもつ備中国分寺跡、7世紀後半の山城とされる鬼ノ城など、はじめて訪問するところばかりだ。刈り入れをおえた田圃のむこうで、柿の実が赤く色づき、“これぞ吉備路の秋”という光景が楽しめる。

夕方、岡山市内に久しぶりのメンバーが集まり、夕食会があった。着任した時期はそれぞれだが、全員が玉野高校に勤務したことがある先生たちだ。

鬼ノ城の展望台から

鬼ノ城の展望台から

1999年、玉野高校に岡山県下ではじめてとなる国際科がつくられた。立ち上げをしたのは三善真先生(現・西大寺高校校長)たちで、40代前半の気力も体力も充実した教師たちである。入学手続きの書類と一緒に『国際感覚ってなんだろう』を手渡し、入学後にわたしが講演にでかけるというプログラムを考えた。

一事が万事で、自由な発想の生き生きした学科が誕生した。職員室で国際科の哲学をえんえんと論じ合い、午後9時あたりから“さあ、授業の準備をしようか”とやっていたらしい。そんなエピソードを聞いていると、梁山泊の趣さえある。

槇野先生がワインの美味しいお店をアレンジ

槇野先生がワインの美味しいお店をアレンジ

残念ながら、玉野高校国際科は10年で幕を閉じた。ただ、三善先生、福本まゆみ先生(現・玉野高校校長)、橋本文彦先生(現・笠岡工業高校教頭)たちが開拓した実践は、岡山県の教育史にエポックを画すものである。玉野高校の国際科とはなんだったのか、いつかぜひ考察をまとめてもらえたら、と願っている。

玉野高校国際科がどんな人材を生み出したのか、判断をくだすにはもう少し時間が必要だろう。ただ、一つだけはっきりしているのは、玉野高校に集った教師たちが、県内のあちらこちらの学校に転勤し、ひときわ大きく羽ばたいている、ということである。

杏林大学でFD講演会

先日、杏林大学の八王子キャンパスで講演をした。外国語学部のFD委員長・楠家重敏先生にいただいたテーマは「良い授業をめざして」、これに当方で「獲得型授業の視点から」とサブタイトルをつけた。対象は、外国語学部、総合政策学部、保健学部の先生たち100人ほど。やってみて、むしろこちらが学ばされることが多かった。とりわけFD問題のポイントは教員間に課題の切実性が共有されていることにある、と改めて気づかされた。

JR八王子駅からキャンパスまで、バスで30分かかる。同じ八王子市にある帝京大学と中央大学で非常勤講師をしていたから、行く前からなんとなくキャンパスの様子は想像できたが、周囲の山々の緑が思いのほか濃くて、雨にけぶるキャンパスはそのぶんだけ別世界の様相を呈していた。

事前にもらったFDアンケートの冊子に先生たちの生の声があふれている。“やらされている感”が少しもないのが頼もしい。講演と会場のディスカッションが半々という時間配分にも、FD委員会の意欲が表れている。こうした条件があるとやりやすい。会場の雰囲気の柔らかさにつられて、ついつい持ち時間をオーバーしてしまった。

ただ、大人数だということと固定席の教室だということもあって、切れ目なく質問は出るのだが、どうしてもわたしと会場のやりとりが中心になる。それでも日本語学の金田一秀穂先生が「教育方法について全員で足並みを揃える必要があるのだろうか」「評価をどう考えるのか」などディベータブルな質問をして盛り上げてくれた。初対面だが、演劇的知にたけた方のようで、大いに助けられた。

2年後には、八王子キャンパスの3学部が、そろって医学部のある三鷹キャンパスの近くに移転する予定という。都心回帰の流れだろう。三鷹周辺にも伝統のある大学が多いことを考えると、移転は新しい競争環境に入っていくことをも意味する

それだけにFDはきわめてリアリティのある課題になっている、と全学のFD・SD部会の部会長である黒田有子先生も話しておられた。移転業務とFD研修を同時並行で進めるのは大変だが、課題の切迫感を共有することが、ことを進める原動力になる。

今回は、外部講師による初めての講演会ということだが、次のステップは、杏林スタンダードの形成にむけたワークショップという方向に進むのだろうか。

大阪でドラマケーション

先週、大阪環状線の福島駅からほどちかい金蘭会高校で、ドラマケーションの講座があり、そこで「コミュニケーション教育の理念と方法」という講義を担当した。

福島駅は大阪駅のすぐ隣りにある

福島駅は大阪駅のすぐ隣りにある

校舎3階のホールは、天井が高く、床は総ジュータン張り。ワークショップにぴったりの空間である。照明設備も素晴らしい。東住吉高校や咲くやこの花高校のような演劇科をもつところはともかく、大阪の普通高校でこんなに本格的な照明設備のあるところは、ほとんどないだろう。

公立・私立高校で演劇部の指導をしている人を中心に20数人が集まった。南村武先生(関西福祉大学金光桐蔭)、山本篤先生(金蘭会)たちがリーダーになって、若い世代の先生たちとベテランのいいチームワークができている。

いつものことだが、尾田量生さん(普及センター長)のワークショップは、落ち着いた雰囲気である。指導者が声を張り上げるのではなく、自分の身体をその場にはこんでいって、モデルを見せるやり方だからだ。

これから「人間知恵の輪」がはじまる

これから「人間知恵の輪」がはじまる

「ハンドリンク」や「人間知恵の輪」のときに大きな輪ができる。観客席の側からその輪を眺めていたら、ふいに山口薫の「おぼろ月に輪舞する子供達」の画の世界が浮かんできた。こんなことははじめてである。斜め上方から広々と俯瞰する構図に触発されたのだろう。会場に活気があふれているのに、それでいて静かさも感じる。

懇親会で、若い先生たちが、自分のかかえているモヤモヤした迷いを率直にぶつけてくれた。グループワークで早急に学習効果を上げるよう学校から指導されているのだが、そもそも生徒が発言しやすい雰囲気をつくる方策が自分たち教師の側に備わっていない。その分析がないまま、教材のつくり方をもっと工夫すればいいのでは、など空回りの議論が続いてきた、という事例も教えてくれた。

なるほど、ワークショップ会場で私の感じた静かな熱気というのは、こうした一人ひとりの熱意が放射されてできあがったものだったのか、と納得した。

秋田明徳館高校の研修会

明石書店に『(仮題)ドラマ技法研究の最前線』の入稿をすませた。25日のことだが、それからもいろいろあって、やっと年賀状にかかっている。

松尾先生が授業のねらいを説明する

松尾先生が授業のねらいを説明する

それにしても、明徳館高校の定時制の先生たちの、フットワークの軽快さと創造性の豊かさには驚いた。同じ12月25日の教員研修会でのことだ。いま明徳館は、研修に熱心な校長・安藤巳智子先生のもとで「互見授業」に持続的に取り組んでいる。

そこで2時間半の研修を、基調講演+「ウォークの色々」などのウォーミングアップ・アクティビティ体験+ワークショップ「松尾実践をサポート!」で構成することにした。

ワークショップの素材は、すでに行われた「商業」の研究授業である。起業の相談に来た人に、生徒がコンサルタント役になって企業形態をアドヴァイスするという授業だ。当日、研究授業を参観できなかった人は、DVDを視聴して今回の研修会に臨んでいる。

ワークショップでは、松尾先生にむけて、39人の先生たち(6グループ)が研究授業とは別のバージョンを提案する。改訂のポイントは、①グルーピングの仕方、②課題とその提示の仕方、③話し合いの形式、④発表形式、⑤振り返りの仕方である。それを模擬授業で提案するところがミソだ。もちろん生徒役もみんなでやる。

これがビックリするほど面白い。理由が三つある。一つは、6グループの提案ポイントが1つとして重ならなかったこと、二つ目は、速成グループでありながら、プレゼンテーションが演技もふくめて実に闊達だったこと、三つ目は、「ティーチャー・イン・ロール(先生も演技)」や「プロムナード」などのドラマ技法が、それと知らずにごく自然に使われてしまっていることだ。

三つ目の点は、松尾実践に「専門家のマント」が使われているのが引きがねになったかも知れない。日本の教師たちが、必ずしも自覚的に方法化してきたのでないとしても、長い時間をかけて蓄積してきた知恵が、ここで露出したのだ、と感じる。獲得研の小松理津子先生のいたチームでは、なんと「コレクティブ・キャラクター(みんなで一人)」のバリエーションまで使われている。来年は、松尾先生が、このバージョンで授業をやることになった。

通信制を併設する秋田明徳館高校は、秋田県内でも特別なポジションにあるいわば実験的な性格の学校である。ここでの実践研究の成果をぜひ「明徳館モデル」として発信して欲しい、とお願いした。

安藤校長は、私の中学時代の恩師・小林卓巳先生のお嬢さんだ。帰りの新幹線では、こうしたタイミングで仕事をご一緒できる不思議さと喜びを、しみじみかみしめたことだった。人生の出会いの妙である。