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東京の再会

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八面六臂の活躍というのだろう。一時帰国中の藤光由子先生(パリ日本文化会館日本語教育アドバイザー)のことだ。

今回の獲得研セミナーでは、午前中の全体会でご自身がコーディネートした「第1回全仏高校生日本語プレゼンテーション大会」について報告、午後の分科会「インタビューからプレゼンへ」でも、リソース・パーソンとして、自分史を語ってくださった。

北海道大学で国際政治学を学んでいた藤光さんが、日本語教育の大切さに気づくようになったきっかけ、中国からの留学生であった現在のご亭主・施さんとの出会い、シンガポール、オーストラリア、ニュージーランド、フィリピンなどでの専門家としての仕事・・・、限られた時間ではあったが、起伏に富む人生の物語を率直に語って、参加者に強い印象を残した。

今春、パリで行われたプレゼン大会の詳細は、いまも日本文化会館のホームページで見ることができる。内容はもちろんのこと、影絵などさまざまな技法を使った各チームのグループ・プレゼンテーションは、発表スタイルの面でも見事なものだ。このプロジェクトひとつとっても、日本語教育にかける藤光先生の情熱の大きさと緻密さを推しはかるのに十分である。

http://www.mcjp.fr/ja/la-mcjp/actualites/1

藤光さん・施さん夫妻は、短い東京滞在の貴重な時間、そのかなりの部分を今回の発表準備に費やし、一陣の爽やかな風をセミナーに送って、パリに帰任したのだった。

第12回獲得研夏のセミナー終了

総勢100名を越す参加者が集い、大盛況のうちに12回目のセミナーが終了した。北海道から九州まで、全国各地から参加があり、なかにはメキシコや中国などから一時帰国中の方たちもいた。

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今年の参加者の特徴でいうと、なんといっても初参加の方の比重が高かったこと、またいろんな大学から学生・院生の参加があったことがあげられる。

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写真係として、8つの分科会をすべて見て回ったが、レンズ越しにも、いつもとは一味違う新鮮な空気感が感じられた。

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ただ、さすがに12回目のセミナーともなると、ごく自然に安心の空間が作られているようである。効果的なウォーミングアップのおかげで、ぎくしゃくした感じは少しもなく、初参加の方たちも実にのびのび振る舞っている。

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昨年もそうだったが、パーティーがはねても、会場でおしゃべりを続ける方たちがたくさんいた。立ち去りがたい思いが残るのだ。その光景がセミナー全体の雰囲気を象徴的している。

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「インタビューからプレゼンへ」など、新機軸の企画がたくさんあったことも含めて、獲得研の今後にとって大きな転機となるセミナーだったように思う。

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これからアンケートの結果やメンバーのふり返りの内容を持ち寄り、いろんな角度から総括作業を進めることになる。いま進行中の「獲得研シリーズ」第4巻の編集作業も含めて、夏休みにしかできない仕事をゆっくり楽しみたいと思う。

フランスの若者たちが演劇的プレゼンに挑戦

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月曜日に、国際交流基金本部のホールで、フランスの大学生たちが演劇的プレゼンに挑戦した。発表したのは、フランス全土から選ばれて、日本のものづくりや最先端の技術を見学した学生さんたち13人。

研修成果をニュースショ―形式で発表する、このスタイルが斬新に映ったようで、基金の関係者はもちろん、参観した企業関係者からも大好評だった。スライドを背に、キャスター、企業の関係者、訪問する学生など、いろんなキャラクターが登場する。

大日本印刷、資生堂、トヨタ、ガイアックスの4社のそれぞれの企業理念から生産ラインでの具体的な工夫までが、登場人物のセリフを通して語られたのだが、これが初挑戦とは思えない実に達者なもの、たった4時間で場面を作ったと聞いたが、メモを一切見ないで発表する学生もいたのには驚いた。(発表言語は英語)

パリから学生を引率してきたパリ日本文化会館の小島瑞希さんの指導よろしきを得た結果である。発表が終わってから、インタビューしてみたら、学生さんたち自身も大いに楽しんで取り組んだようだ。日本とフランスの企業文化の違いで気づいたのは何?という当方の質問に、日本の企業がそれぞれ資料館や博物館を整備して自社の歴史を大事にしていること、という答えが何人かから返ってきた。

パリの研修会で体験してもらった技法が、こうして早速活用される場面に遭遇するのは、私にとっても嬉しいことである。昨夏、パリ日本文化会館の内部を案内してくださった小林美帆子さんとの再会、これも嬉しいできごとだった。

羅旭さんが秋田県庁に

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中国の大学で日本語を教えていた羅旭さんが、JETの国際交流員として秋田県庁に赴任した。相当な難関を乗り越えての就職だったようだ。

久しぶりにあった羅さんは、私の大学院のゼミ生だった頃と少しも変らない、爽やかな笑顔だった。

DSC00012八郎潟の願人踊り

待ち合わせた秋田県立美術館のあたりが、ちょうど「食と芸能大祭典」の会場になっていて、大賑わい。去年は、13万人の人出だったというが、秋田のどこにこんなに人がいたのか、というくらい混雑していた。(上は八郎潟の願人踊り、下は角館の山車)

DSC00013角館の山車

いくら日本語の達人とはいっても、新しい土地での新しい仕事、何かと気苦労があることだろう。ましてや羅さんは、人一倍思いやりがあり、気配りをする人である。

これから、どんどん遠慮なく周囲に相談して、ぜひ秋田で良いネットワークを築いていって欲しい、そう思ったことだった。

 

古市古墳群

年末のことになるが、あかり座公演にあわせて、宮崎充治さんが「ディープ大阪ツアー」を企画してくれた。武田富美子さんとの3人旅である。

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今回のテーマは古墳巡り。阿倍野橋から近鉄線で南下し、古市駅下車。手前にある道明寺駅まで、一駅分だけ歩く。(上は誉田八幡宮)

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そんなに長い距離ではないが、誉田八幡宮―応神天皇陵―古室山古墳―道明寺―道明寺八幡宮と、見どころ満載だ。(上と下は応神天皇陵)

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地図でみると、羽曳野市のこの周辺だけで大小30ほどの古墳が確認できる。仁徳天皇陵を中心とする百舌鳥古墳群とあわせて、世界遺産登録を目指しているらしい。(下は古室山古墳の後円部でとても見晴らしが良い)

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この日は晴れたり曇ったりを繰り返す怪しい空模様になったが、その分、応神天皇陵の山の端からこぼれてくる西日をみて、改めて歴史の厚みを実感したことだった。

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道明寺八幡宮は、初詣にそなえて大きな賽銭箱を設置、通路の砂利も新しくしているから、ひときわ清々しい雰囲気である。

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そんなこんなで、大阪情緒にあふれた歳末の気分とあかり座公演の無事終了にともなうホッとした気分、その両方を味わうツアーになった。

春日井市の日本自分史センター

愛知県春日井市役所の向かいに「文化フォーラム春日井」という立派な建物がある。そこの「日本自分史センター」を訪ねた。自分史をテーマとする唯一の公的施設で、全国から寄贈された出版物1万冊を収蔵している。

文化フォーラム春日井、センターはこの2階にある

文化フォーラム春日井、センターはこの2階にある

専任講師の安藤錦風(紀夫)先生の解説がおもしろかった。「自分史」という言葉は、もともと色川大吉さんの用法によるものらしいが、普通の市民が自分の人生を綴るもので、有名人の書く「自叙伝」というような物々しい雰囲気のものではない、という。センターでは、自分史の普及のために、文章講座、添削サービス、サークル活動とさまざまに工夫をこらした活動を展開していて、「掌編自分史全国公募事業」も12年続いている。

全国の動向から執筆のポイントまで、なんでも教えてくれる安藤さんは、自分史の生き字引のような方である。1980年代のはじめころは、300冊印刷して費用が300万円もかかる時代だったから企業人の自伝が多かったが、その費用が半額以下になってじょじょに裾野が広がり、発行点数も増えていったらしい。

右が安藤先生、左はかすがい市民文化財団の横谷朋子マネジャー

右が安藤先生、左はかすがい市民文化財団の横谷朋子マネジャー

大震災後のいまは「第5次のブームです」という。もちろん社会の高齢化も背景にあるのだが、未曽有の災害に直面して自分の存在理由を探す人たちが増えたことが大きい。なにかと話題の「エンディング・ノート」も広くは自分史のジャンルに入る。それでは、さぞかし退職年齢になった団塊世代の人たちが殺到していることだろう、と思いきや「そんなに文芸的な世代でないようですよ」ということだった。肩すかしである。

右のテーブルが相談コーナー

右のテーブルが相談コーナー

せっかく書きはじめてみたものの、途中で挫折してしまう人も多いらしい。その対策として、自分の誕生から筆をおこす大河ドラマ風の書き方ではなく、強い印象を残したエピソードから順番に書く「短編集」のやり方を推奨しているという。「“自分探し”と言われますが、文章に書きだして考えることで、自分を再発見するということがよくあります。だから、若い頃から自分史の考え方に触れて欲しいんです」という。それがひいては自分史のすそ野を広げることにもつながる。

JRの春日井駅は、名古屋の中心部から電車で20分ほどの場所である。ここにニュータウンができ、文化的なものをもとめる新住民の意識が自分史センターの設立を後押ししたのだった。このあたりは小野道風の出身地とされているから、「筆をペンにもちかえて自分史を書く」ということになる。全国で唯一というその意気込みが素晴らしいではないか。

5月23日(土)には、『自分史の書き方』を刊行した立花隆氏らをゲストに迎えて、「第17回自分史フェスタ」も開かれる。

日本自分史センター:http://www.kasugai-bunka.jp/jibunshi

日本教育方法学会第50回記念大会

今回は和田俊彦さんにずっとお世話になった

今回は和田俊彦さんにずっとお世話になった

例会の帰りに両角桂子さん(コア・メンバー)から「やっぱりそうか」といわれたが、余りの慌ただしさで、しばらくブログが書けなかった。先週は、広島大学で日本教育方法学会の研究大会だった。ラウンドテーブル「演劇的知の教育方法学的検討(2)」では、昨年の宮原順寛氏(北海道教育大学)に続いて、気鋭の古典文学研究者・中野貴文氏(東京女子大学)から力のこもった報告があった。

中野氏は「ドラマ的な手法を用いた古典文学」というテーマで、古典教育のフレームの改革を提案している。中高生の7割近くが古典学習への嫌悪感を抱いているといわれる現状をどう打開するのか、そのヒントがドラマ的手法の活用にあるというのだ。

それをたんなる仮説に終わらせず、自ら実践しているところが面白い。大学生たちが『伊勢物語』の「芥川」から「世界の中心で愛を叫ぶ」のパロディー版を、また『源氏物語』の「桐壷」から「スクールカースト」のドラマを演じるという事例を紹介してくれたが、テキストとの対話から出発して、現代版のドラマをつくり、もういちどテキストに戻ることで、読みの深まりや批判的な思考の獲得がみられるのだという。

広島大学研究大会 028文献研究の道を歩いてきた中野氏が「実践のことば」で報告するのはなかなか勇気のいることだろう。だが、実践的研究者・研究的実践者として自己を定義するのであれば、今回のように、自分の実践を俎上にのせることも避けて通れない。セッションのあとで「もう後戻りできないということですよね」という述懐があったが、むしろ私は、それを中野氏の決意表明ときいた。頼もしいことである。

今回の大会にあわせて日本教育方法学会編『教育方法学研究ハンドブック』(学文社)が刊行された。444頁、著者88名という大冊で、方法学研究の歩みが一望できる。会長の深澤広明氏(広島大学)が「刊行のことば」で、「第Ⅲ部「教育学研究の歴史と展望」は、研究ハンドブックとしての本書の中核的部分であり、研究の歴史、現状、展望が学会に関係する先行研究をもとにレビューされている」と書いている通りである。獲得研にとって嬉しいのは、「授業づくり研究」の章に「授業設計・展開」と並んで「学習活動・アクティビティ」の節が入ったことだ。おかげで、この20年余りのアクティビティ研究の流れをふり返る作業もできた。

一気に読み通すわけにはいかないが、ページを繰っていくと、存外執筆者の個性があちこちにでていて、こりゃあ読み物としても面白い、と感じられてきた。