邸宅(庭園)にかける情熱

一週間ぶりにロンドンに戻った。今回のテーマの一つは英国庭園である。トーベイでは、なんといってもクリスティーのグリーンウェイが有名だが、こことナショナルトラストが管理するもう一つの庭園であるコールトン・フィッシュエーカー(Coleton Fishacre)の2か所を見学した。

コールトン・フィッシュエーカーは、はじめて訪問した場所だったこともあって、ことさら印象に残った。1920年代から30年代に、10数年かけて大きな谷を丸ごと開発した別荘である。

つくったのは、サボイホテルの経営者でオペラ劇団(例のミカドを上演した劇団)のマネージャーだったRupert D’Oyly Carte の家族だ。

石造りの建物は、全館みごとにアール・デコ様式で統一されている。


1920年代、造営当初の記録写真をみると、20エーカーもあるただの大きな牧草地である。


ここに仮設のレールを引き、谷底から石を運びあげて、石段と建物を作った。谷底に水流をうがち、いくつかの池もつくっている。なんだか凄いエネルギーのかけかただ。

われわれにいわゆる庭とみえるのは、広い芝生にウォールガーデンがついたWellington’s Wall and Bowling Green Lawn と小さな水流の源付近にあるThe Rill Gardenくらいなものである。

あとは谷の両側の傾斜を利用した雄大な散策路(=庭)といった方が適当だろう。

散策路がまっすぐに海に駆け下る谷の両側にあるため、歩き回るのに相応の脚力がいる。


その代わり、巨大なチューリップ・ツリーがそびえたつ広場や海上に浮かぶ小島を見下ろす四阿など、変化に富む景観が楽しめる。


水際にモミジが連なっているかと思えば大きな杉の木が林立していたり、はては金魚が遊ぶ睡蓮の池やササヤブまであるから、なんだか親しみさえも感じる。


自然の力がもちろん大きいが、たった100年の間に、これだけ味わい深い空間ができていくのだから、歴代の住み手たちが、この邸宅にどれほどの情熱を注いできたことだろう。

こうしてみると、景観というものが、時間をかけて育てていくものだということがよく分かる。

 

コメントは停止中です。