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ラッセルスクエア周辺

地下鉄のラッセルスクエア駅は、ロンドン大学の最寄り駅だが、私にとっては書店のディロンズに通った駅という印象が強い。

1990年代は、いまよりも円高だったから、本をたくさん抱えて地下のカウンターにいき、そこで箱詰してもらった本を、数か月後に船便で受け取った。当時のディロンズもいまは書店ウォーターストーンズに変わっていて、地階にあるカフェにだけその名が残っている。

書店までの経路だが、駅の改札をでてからラッセルスクエア公園を左手にみて、まず交差点をわたる。(上の写真:ラッセルスクエア)

そのままワンブロックばかり北上すると、もう一つの公園タビストックスクエアがあらわれる。このあたりには○○スクエアという名の公園がいくつもある。(下の写真:タビストックスクエア 背中はガンジー像)

タビストックスクエアの前で左折し、まっすぐ道なりに進むと、やがて書店のビルがみえてくる。

今回もそうだったが、タビストックスクエアでよくリスを見かける。10年以上前になるだろうか。早春の午後に、時ならぬ雪のふる公園を通ったら、一匹のリスがひょっこり目の前に姿をあらわして、一定の距離を保ったままどこまでもついてきたことがあった。

教育や演劇関係だけでなく、いろんなジャンルの本を船便で送ったが、そのなかに植物やガーデニングの本も含まれていた。

20年以上も前からイギリスの庭づくりに強い関心があったとは思えないのだが、ガーデニング関係の大型本がいまも書棚に鎮座していて、最近になって、それらをよく見返すようになってきた。

旧角川邸、旧大田黒邸の庭

ほとんど外出しないまま大型連休を終えたのだが、思い立って、連休の終盤に荻窪駅の南口にある角川庭園・幻戯山房と大田黒公園を訪ねた。どちらも杉並区が管理している。

旧角川邸は、細部まで神経の行き届いた近代数寄屋建築(加倉井昭夫設計)と庭園が融合して、庭屋一体、きわめて居心地の良い空間になっている。

かつては眼下に畑が広がる風景だったというが、南にゆるやかに傾斜した段丘を活かした明るい雰囲気の庭である。

庭の広さとそれに見合った小ぶりな植栽のバランスがみごとで、なんとも言い難い洗練さがある。わたしは住み手である角川源義という人の美意識にちょっとふれられた気がした。

同じ個人住宅だが、旧大田黒元雄邸は角川邸とは対照的なたたずまいで、広い邸内に林立する松、モミジの巨木が圧巻である。箱根あたりの庭にありそうな、豪壮な石組みと立派な池泉もそなえている。

ただ、若き日をヨーロッパで過ごした人の好みだろう。建物の前に広がる景色が広い芝生になっているせいで英国の風景式庭園を思わせから、どちらかといえば折衷様式のテイストがある。

この大田黒邸のアカマツ群は、見上げると首がいたくなるほどの高さで林立している。余りの迫力に最初こそ驚くが、そのうち、なるほど林立する幹そのものが見どころになる庭もあるのだと、納得させられた。

角川邸で時ならぬ雷雨にあい、長い雨宿りになってしまったが、それもまた風情があって楽しかった。