月別アーカイブ: 3月 2019

多文化主義の退潮

イアン・デービス先生(ヨーク大学)から、イギリスで多文化主義が語られなくなったという話があったが、Brexitをめぐる推移をみるにつけて、なるほどと実感できる。

スミス・スクエアにあるヨーロッパハウスを、藤光由子先生のアレンジで見学して、その感をさらに深くした。

階段ホールに、EUの歴代委員長の肖像が掲げられているこのビルは、ルーフトップバルコニーから、ビクトリアタワーやウェストミンスター寺院が間近に望める、まさにロンドンの中心地である。

しかも、ギャラリーと会議場を備えたこの建物は、もともと保守党の所有だったもので、サッチャ―政権が成立したときの記者会見は、まさにこの場所で行われたのだという。このあたり、ヨーロッパハウスに対するEU側の力の入れようが推し量られる。

案内してくれたポール・ケイさんは、ブリュッセルの本部から派遣され、英国に多言語主義を定着させるため、さまざまな企画展を開いたり、パンフレットを編集したりという役割を担ってきた方だが、3月中にこのオフィスをたたんで、ブリュッセルに帰ることになっているのだという。

Brexitは一時的に延期となっているが、さて8月の訪問のときにはどうなっているのか、目が離せない。 –

オックスフォード大学の授業

先日、オックスフォード大学のオリエンタル・インスティテュートで、1年生の日本語クラスを見学させてもらった。担当の西澤芳織先生は、昨年のパリ研修会の参加者である。受講生6人という恵まれた規模で、そのなかに日本語学習歴6年の学生も混じっている。

左が金田先生、右が藤光先生

 この日のテーマは敬語だが、西澤先生の進め方がすこぶる面白い。アルフォンス・デーケンさん、弦念丸呈(ツルネン・マルテイ)さんなどの文章を素材にしてペアワークをやるのだ。作家本人に「なった」学生に、インタビュアー役の学生が質問し、内容を立体的に描き出す。ドラマ技法の「ホット・シーティング」を使った授業である。

3組のペアがそれぞれ会話を終えたところで、「嘘も方便」と「本音と建て前」の境界はどこだろう、という議論になった。ゲストのわれわれも意見を求められたが、さすがに不意をつかれた論点で、思わず知らず熱い議論にまきこまれる結果になった。

後列中央が西澤先生

 ディスカッションを通して気がついたのが、学生たちの背景の多様性である。6人のなかに、フランス系、ルーマニア系、中国系、スコットランド系、日系の学生がいる。議論しているうちにごく自然に比較文化論になっていくので、これがまたなんとも楽しい。

 授業の後、旧知の金田智子先生(学習院大学教授 サバティカルで滞在中)が、発表を担当する研究会にも飛び入り参加させてもらったので、これまでのオックスフォード大学訪問とはまた一味違う展開になった。