『世界』(岩波書店)の3月号に、「アクティブ・ラーニングは可能か」という一文を寄せている。“「学び方改革」の視座”と題する特集の一環で、これは2020年から実施される学習指導要領の改訂をにらんだ企画である。
『世界』が教育問題をテーマにして大きな特集を組むのは珍しい。私が以前かかわった特集では、なんといっても“総合学習大丈夫? 学校の新しいかたちを考える”(2002年6月号)が印象深い。その時に寄稿した論考が「総合学習に展望はあるか」で、教育雑誌に投稿したときとはまた違う層の人たちから反響があったからだ。まだICU高校の教師だったころのことである。
あれから15年たつが、この15年の間に、日本の言論状況そのものがすっかり様変わりした。『論座』や『展望』などの総合雑誌が相次いで撤退し、その一方で、民主主義の危機が当時よりも明らかに深刻の度を増している。その分、『世界』に期待される役割が大きくなったということだ。
ましてやこのところの社会情勢である。トランプ問題、憲法問題、沖縄問題、経済格差と貧困化、原発問題等々、限られた誌面のなかで取り上げるべき喫緊の課題がいくらもある。
それらのテーマに比べると、教育問題は一見して緊急性が乏しいテーマのようにも見える。確かにそうかもしれない。ただ総合雑誌には、アップツーデートな課題を取り上げると同時に、中長期的なスパンで考えるべき事柄を提起して言論の歴史に爪痕を残していく役割もある、と思っている。
その意味で、今回、『世界』の編集部が教育問題で特集を組む、という見識を示したことに、改めて敬意を表したい。