聖アンナと聖母子

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久しぶりにルーヴル美術館に入った。ガラスのピラミッドができてからはじめてである。若いころは、エリアを特定し、膨大なコレクションを何日もかけて見て回った。近年は、人出が凄いと聞いているので、たとえ徒歩圏内に宿をとることがあっても、ついぞ出かけたことがない。

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30年ぶりのルーヴルは、想像以上の人出で、芋洗い状態である。「モナリザ」はガラスケースに入り、スマホを頭上にかかげる数十人の人垣が柵のまわりを取り囲んでいるので、なんだか大きな記者会見みたいな様子だ。そもそも作品に近づくことさえ難しいので、これは早々にあきらめた。

私の好きだったスペイン絵画のコーナーも様変わりしている。当時、チュイルリー公園側の奥まった部屋にいくと、まるでご褒美のように、ゴヤ、ベラスケス、ムリリョ、エルグレコの名作を思うさま眺めることができた。小さな部屋にはいつもほとんど人の気配がなかったが、あらかたの作品が大きな部屋に移動していて、しかもわんわんの人である。

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今回は、ダヴィンチの「聖アンナと聖母子」に時間をかけた。ダヴィンチが生涯手元において加筆を続けたというだけあって興趣がつきない。自宅の書斎の壁にこの作品のコピーをかけて20年ばかりながめていても、それほどしっかり見たことがないので、一度じっくりみてみようというただそれだけのことである。謎解きのためではない。

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近景・中景・遠景の描き分けの見事さはもちろんのこと、空気遠近法というらしいが遠景の山々自体も微妙なグラデーションで奥行きをだしている。描かれた山容をみているうちに、わたしはつい最近見たアルプ湖のはるか向こうに広がるドイツアルプスの景色を思い出した。

近年の修復で画面が明るくなったということだが、マリアの衣のブルーと遠景の山々のブルーとの対応もよりはっきり意識できるようになった気がする。アンナとマリアと幼子キリストの視線の交錯もいまさらに興味深く、ただぼんやり眺めるだけでもいろんなことを考えさせてくれる。

同じ部屋の背後の壁には、繊細きわまるラファエロの「美しき女庭師」がかかっていて、ダヴィンチとラファエロの作風の違いも一目で感得できる。まあなんとも贅沢なことである。

 

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