秋田の実家の庭は、池のない平庭である。東西にそれぞれ築山がつくってあるが、まあ、ほとんど平べったい庭といってよい。
景色に変化をつけるためだろう。あちらこちらに庭石が立っている。ただ、庭石が屹立しているわけではなく、どれもいくらか地面に埋まっていて、あたかもそのままもとの自然に帰ろうとしているかのような風情である。
庭石はことごとく丸っぽい形状で、力みのない、自然体の雰囲気をもっている。名石などというものからはるかに遠く、穏やかな印象の石ばかりだから、見ようによっては、道端の道祖神のように見えなくもない。
これらの石を眺めていると、わたしは先祖の人たちの美意識になんとなく近しいものを感じる。
いったい庭にいくつ石があるのか定かではないが、今回も植込みのかげで、すっかり苔におおわれ、地面のもりあがりとほとんど区別がつかなくなっている大きな石をひとつ発見した。