月別アーカイブ: 12月 2015

中村高校でリユニオン

中村高校でリユニオン 022

中村高校で高校生プレゼンフェスタのリユニオンがあった。今回は、朝日新聞のインタビュー取材ということで、50人全員ではなく11人(2つの発表グループ、私立校を中心に8校)の生徒だけが集まった。フェスタのテーマ「18歳選挙権で日本はどうなる」が話題の中心である。

インタビュー会場は、校舎7階のコリドール。ここが眼下に清澄庭園・清澄公園をみおろす素晴らしい環境の図書館になっていて、公園と反対側の窓からはスカイツリーも見える。

中村高校でリユニオン 013

まずフェスタ当日の記録映像をみんなで観て、それから生徒たちが前田育穂記者の質問を受ける。この流れは、運営委員長の早川則男先生(中村高校)のアレンジである。久しぶりの再会で気持ちが弾んでいるうえに、ビデオ視聴でひとしきり盛り上がったせいで、すっかり雰囲気がなごんでいる。

インタビューを傍聴して気づいたが、生徒の文化的背景がとても豊かである。リトアニア人の留学生やASIJの生徒、ハンガリー留学から戻った生徒もいる。前田記者自身も帰国生とあって、ときに英語を交えながら、11人の生徒にまんべんなく意見を求めている。

そのお蔭で、生徒たちの自由闊達なおしゃべりが続き、何回かスーッと深い展開になるときがあった。フェスタで、なぜこんなにも多彩な発表ができるのかという話になった時のことである。今回、演劇やミュージカル仕立ての発表になったのは、当日の教師たちのモデルプレゼンが大きく影響しているし、違う学校の生徒たちが集まったことでグループ内に意見の多様性が生まれ、それが内容を面白くしたのだという。

では、自分の学校でいつものメンバーと発表をやったらフェスタのときと同じようにいくのだろうか。それは難しいらしい。学校で「発表」といえばパワーポイントが定番。そもそも日頃から意見をぶつけ合わせるということに慣れていないから、ネット情報そのままだったり、特定のだれかの意見にあわせたりする発表になってしまうのだという。こうした状況を変えていくのは、そう簡単ではないようだ。

今回の訪問で、久しぶりに小林和夫先生(中村中学・高等学校 理事長)にお目にかかった。小林先生は、毎朝全校生徒を校門で出迎え、彼女たちに元気に声をかけるのを日課にしている。体調を崩されたと聞いていたが、一時はひとりで寝返りもうてないほど重篤な状態だったらしい。

しかし、校門に立つ日を目標にリハビリを続け、みごと復帰されたという。なまなかの気力ではない。その姿がどんなにか周囲を励ましてきたことだろう。お話を聞くうちに、こちらまですっかり嬉しくなってしまったのだった。

価値発見力―岡田庄生さんのセミナー

第99回例会 025

獲得研のオープンセミナーで、いま注目の若手経営コンサルタント・岡田庄生氏(博報堂ブランドデザインコンサルタント ICU高校の卒業生)の講演をみんなで経験した。ワークショップを組み込んだ「価値発見力~つい買いたくなる商品の『価値』の見つけ方~」という講演である。

岡田さんによると、価値発見にむかうステップは、①具体的事実・行動から考える、②人の「気持ち」に変換して考える、③象徴的な一言に絞り込むの3つだという。

今回は、私に気を遣って「獲得型コンサルティング」という言い方をしてくれたのだが、推測するに、岡田さんの仕事の進め方のポイントは、企業の関係者が、自分の企業の価値を自分で発見することにあるようだ。

それで私たち参加者も、「夏の甲子園」「鍋料理」などを例に、その独自の価値をさぐっていく経験をした。また、コンテスト形式で「あげパン」のミニ広告づくりもやった。その場で、あげパンのいろんな広告文ができたが、なかでも「ふた口あげパン、ぐっと牛乳」が多くの参加者の支持を集めた。こんな具合で、終始笑いの絶えない、考える楽しさの横溢する講演会だった。

ご本人が長い時間をかけて到達したであろう知見を、参加者が短い時間で追経験できるように工夫している。みごとなものである。

岡田さんの私への気遣いが、もう一つあった。私がICU高校の卒業アルバムに書いた一言コメント「今 見ヨ イツ 見ルモ」(柳宗悦 心偈)を、わざわざデータにして取り寄せ、スライドで見せてくれたことだ。柳は「一切の真なるものは、今見る時にのみ、残りなく、その姿を現してくれる。それは即今に見ることであり、真に見ることは、この即今以外の出来事ではない」と解説している。すっかり忘れていたが、あの頃は、柳のこの偈をよく書いていたのだった。

来年1月に徳島あかり座公演が予定されているので、早速、岡田さんから学んだ「3つのステップ」を応用してみようと相談している。徳島大学の留学生や市民の方たちと獲得研のメンバーのコラボで、「多文化共生のまちづくり」のビジョンを演劇的プレゼンテーションで表現する試みである。

さてどんな風に展開されるのか、これもまた見ものである。

現場生成型の研修プログラム

第99回例会 001

獲得研の第99回定例会で、北海道大谷室蘭高校の藤田真理子先生から「『進路学習』への取り組み」と題する報告があった。藤田さんは、進路指導部長20年というキャリアの方だが、今年度、学校設定科目の「進路学習」(3年生、2単位、週1回・2時間続きの授業)を立ち上げた。

生徒たちは、「学校給食」「室蘭市はどんな町であることが望ましいか」「18歳選挙権」といったテーマで、毎回、グループワークやディスカッションに取り組み、広い視野から進路を考えている。私の思い込みかもしれないが、“ただ自分のためだけでなく、だれかの役に立つ仕事をするにはどうすればいいか”を生徒に意識してもらうことが、進路指導の基調テーマになっていると感じた。

生徒の振り返りシートを読ませてもらうと、彼らがホームルームクラスの壁をこえて、語り合い、多様な見方を獲得していく様子がよく分かる。30代から60代の6名の教師で、このチャレンジングな授業をやっている。ことに興味深く感じたのは、この授業が、事前の打ち合わせや振り返りを通して、教師チームが自ら獲得型授業の研修を行う入れ子構造のプログラムになっていることだ。

これまでいくつも藤田真理子先生の創意あふれる実践にふれてきたが、おそらくこの「進路学習」が藤田実践の集大成ではないか。獲得研の第4期の課題である現場生成型の「(自己)研修プログラムの開発」というテーマにもピタリと重なる。聴いていてワクワク感を禁じ得なかった。

朝に雪の北海道を発った藤田さんは、獲得研の例会で報告を済ませると、京都に向かって風のように去って行った。相変わらずのエネルギッシュさである。いまごろ冬晴れの京都の街頭で、全国高校駅伝の応援に声をからしてしていることだろう。

年末の風景

八国山 002

今日は穏やかな一日で、書斎の窓から八国山の黄葉がいい具合にみえている。年内の授業も残すところ1週間。さすがに先がみえてきた印象だ。

それで初海事務局長と相談し、獲得研の第4期(2015‐17年度)のビジョンを再検討し、今のうちに、もう少しイメージの共有を進める作業をしようという話になった。

今秋、シリーズ第3巻『教育プレゼンテーション』の刊行に漕ぎつけたことで、ようやく研究会の第1の課題である「アクティビティの体系化」の目途がついた。ここまでくるのに早いもので10年かかっている。

これから引き続きシリーズ第4巻の刊行準備にかかるのだが、研究会の活動としては、第2の課題である「教師研修プログラムの開発」の比重が、これまで以上に高くなる。

それはとりもなおさず研究の公開性をたかめ、「あかり座」公演を活発化することと表裏の関係にある。直近では、早速、来年1月の徳島大学公演が待っている。これからますます獲得研は“旅する教師たち”のグループだという性格が強まることだろう。

研究会にどう新しいメンバーを迎え入れられるのか、そのプランの検討も始まっている。

第15回高校生プレゼンフェスタ―18歳選挙権で日本はどうなる

「第15回高校生プレゼンフェスタ」(11月22日)が、会場の跡見学園高校に50人ほどの高校生と20人近い教員が大集合して、賑やかにおこなわれた。はじめて出会う多文化的背景をもつ高校生たちが、その場でチームを組み、半即興型のプレゼンテーションの創造に挑戦するプログラムである。(以下の写真はすべてガイダンス風景。なかにモデル・プレゼンも組み込まれている)

15回プレゼンフェスタ 010

なんといっても今回の新機軸は「18歳選挙権で日本はどうなる」というビビッドなお題だったこと。さてどうアプローチするのかなあと思ってみていたら、やはり選挙への関心の低さを問題として指摘する発表が目立った。

15回プレゼンフェスタ 018

若者に選挙に行けという前にまず大人が変わる必要があるでしょというものから、周囲に流されず正しい情報にもとづいて責任のある判断をしようと主張するものまで色んなメッセージがあった。

発表内容もしっかりしていたが、同時に発表形式もニュース・ショーありミュージカル仕立てありとじつに多彩なものだった。とくに「(立体画像の)オンライン・ポスター」は、候補者がポスターの枠のなかで政策をアピールするという斬新な趣向で、会場が大いに盛り上がった。

15回プレゼンフェスタ 019

もうひとつの新機軸は、(生徒チームにまじって)教師チームがエントリーしたことだ。プレゼンフェスタにはもともと教師研修の性格がある。だから「作成プロセスを教師自身がリアルタイムで経験する」という試みは自然の流れなのだが、メンバーに余裕ができたことで今回それがやっと実現した。

興味深いのは、8つの生徒チームの発表が押しなべて既定の5分間に収まっていたのに、なぜだか教師チームだけ7分半もかかったことである。どうも夢中になって力が入りすぎたようである。それほどこのプログラムにはわくわく感がある。

15回プレゼンフェスタ 024

振りかえりのとき、ASIJのひとりの生徒から、今回で連続3回目の参加になることと、6月に卒業するのでこれから参加できなくなるのが残念だというコメントがあり、運営にあたった教師たちを大いに感激させた。高校生プレゼンフェスタはそういうコメントを生むようなプログラムになってきている。

15回プレゼンフェスタ 028

聞けば、3年連続参加の生徒が、ASIJには複数いるのだという。