35周年記念選集

作文集 001

先日、第36回「海外子女文芸作品コンクール」(主催:海外子女教育振興財団)の最終審査を終えたばかりだが、例年の審査と並行して、35周年記念選集(仮)『作文集 海外で暮らして』の刊行準備もずっと続けてきた。

昨秋の最終審査会で出版の話がでて、年を越してから、企画が本格的にスタートした。とりあえず、これまで刊行された作品集『地球に学ぶ』を書斎に全部並べて、本のアイディアを練ることにした。作文集を編む仕事は、ICU高校生の体験を集めた本以来のこと、25年ぶりである。『世界の学校から』(亜紀書房)のときの経験が、選集のコンセプトづくりに大いに役に立った。

とはいえ、もともと選ぶという作業自体がシンドイうえに、もとになる作品の数がけた違いに多い。それやこれやでかなりの時間を要したが、100編近い収録作品をリストするところまでなんとか漕ぎつけることができた。

日本の国際化、グローバル化がとめどなく進行している。応募作品の傾向にもそれが反映していて、近年、ほとんど日本で暮らした経験がないという子どもの作品が目立つようになり、国際結婚家庭の子どもの作品も確実に多くなっている。読んでいると、未来の日本人像が先取りされている印象である。

海外で暮らすということは、文化的マイノリティーになる体験をすることと同義である。言葉のわからない土地にいけば、他人の親切がひときわ身に染みる。その分、感性も柔らかく、観察眼も鋭くなる。

これから海外に赴任する家族はもちろん、もっと幅広い層の人たちに、海外生の体験にふれて欲しいと思う。それぞれが味わい深い作品だというだけでなく、日本で暮らす外国人の目で日本をみたらいったいどう見えるのか、それを考える手がかりにもなるだろうし、何よりも、これらの作品が、”私たちの今”、”日本の今”を相対化して眺めるための鏡の役割をしてくれる、と思うからだ。

コンクールは、詩、短歌、俳句、作文の4つのジャンルで、それぞれの分野の専門家が審査する。亡くなった長田弘さんが、16年間(1997~2013)、詩の審査にたずさわり、簡潔で奥深い作品評を書き続けた。今回は作文の選集ということだが、長田弘編『ラクダのまつげはながいんだよ』(2013年 講談社)が詩のジャンルの選集である。この本も良い。

1980年に、コンクールの最初の作品集が刊行されている。ちょうど私がICU高校に就職し「帰国生ショック」に遭遇した年のことである。それもあって、大河のような作品群を通読するという作業が、否応もなく、自分の35年の歩みを振り返る機会となった。

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