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嵐圭史講演と朗読「平家物語の魅力」

今月は、週末ごとにある学会・研究会のお役が4週間続き、昨日でやっと一段落した。

少し前のことになるが、出版NPO「本をたのしもう会」が企画した「前進座・嵐圭史・講演と朗読 平家物語の魅力」(6月6日 武蔵野公会堂)が圧巻だった。

嵐圭史講演会 018

二つある。一つは、もちろん75歳になった嵐圭史さんの朗読の迫力である。私はどうしても「子午線の祀り」の第3次公演(1985)、第4次公演(1990)で観た新中納言知盛の嵐さんを思い出してしまう。宇野重吉のナレーション、山本安英、観世栄夫、滝沢修らにかこまれた知盛がひときわ若々しく見えたが、その嵐さんもさすがに御大の雰囲気である。

嵐圭史講演会 027

7年かけて『平家物語』全12巻の完全朗読(CD29枚)をした方だけあって、講演のテキスト・クリティークが精緻である。物語中、“往生の素懐をとげる”と書かれた男性は1人もなく、みな女性である、などの興味深い知見が随所にちりばめられている。

一人の役者が、偶然にひとつの役と巡り合い、それを契機に、ゆっくりと長い時間をかけて人間的成熟への歩みをはじめる、今回の講演からそんなイメージが浮かんだ。

もう一つの圧巻は、嵐さんの人気のほどである。会で募集を開始するや、たちまち350席が満席。急遽、7月に追加公演をすることになった。

嵐圭史講演会 035

それにしても平家物語はいい。平家没落の物語にふれる人は、否応もなく、人間の運命ということについて考えさせられる。嵐さんが、源氏物語ではなくもっと平家物語に注目して欲しい、と強調しているが、大賛成である。

棟飾り

生家の管理、今年のテーマは母屋の屋根の塗り替えである。しばらく手付かずだったせいで、今回は手間をかけて補修する必要がある。大工さんから、棟飾りの接合部が弱っているので、ただ塗り替えるのではなくいっそのこと飾り自体を撤去してはどうか、という提案があった。

屋根に積もった雪を、棟飾りの先端で支えるかたちになっていて、あちこち弱ってきているらしい。たしかにこの10年、大雪の年が何度かあった。放っておくと、ゆるんだ接合部から水が入り雨漏りの原因になるという。その前に対策をとろう、ということだ。

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しかし、撤去するとなると先端の飾りだけですまない。先端をはずすということは、数十センチ立ち上げてある稜線の飾り全体を撤去することを意味する。大ごとである。

何より、何十年もみなれた屋根の形状が変わり平たい屋根になるということだから、ちょっと残念な気持ちも否めない。逡巡していたら、大工さんが「シンプルなかたちも悪くないですよ」というので決心がついた。

不思議なもので、いざ決心してみると、これからどんな雰囲気の屋根に変わるのか、いささか楽しみな気持ちになっている。