日別アーカイブ: 2015/04/21

メルボルンでワークショップ

2日間で300名を超す参加者がある

2日間で300名を超す参加者がある

JLTAV(ビクトリア州日本語教師協会)の年次大会で“Bring your Japanese ALIVE through drama”と題するワークショップをした。コーディネーターは、獲得研会員の藤光由子さん(西オーストラリア州教育省アドバイザー、パース在住)である。

カンファレンスの会場は、100年を越す歴史的建造物で、格調のある美しいホテル。そこのヘリテージ・ルームという宴会場を、ワークショップ会場に仕立てた。当日の参加者は40名ほど。日本人の先生も10人余り参加している。

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本番では、まず「全身で学ぶ」「教師は学びの演出家」など、獲得研の基本コンセプトを参加者に共有してもらい、そこから3部に分けてプログラムを展開した。

第1部は私がファシリテーター役になって、人と人が打ち解けるプロセスを経験してもらう。「後出しジャンケン」「歩いてあいさつ」など7つの技法を、シリーズ第2巻『学びへのウォーミングアップ』から選んで構成した。

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第2部の進行を、宇佐美慎吾さん(俳優、シドニー在住)が担当した。参加者がニュース・レポーター役を演じる「ロールプレイ」の紹介である。スタジオにいる慎吾さんの質問に答えて、参加者が京都で舞妓さんにインタビューしたり、公園から花見の様子を実況中継したり、といった具合に進んでいく。

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第3部は、アン・ノーマンさん(尺八奏者、メルボルン在住)による日本の民話「おむすびころりん」のストーリー・テリング。参加者みんなが協力し、鉦や太鼓、鈴やササラなどを演奏し、歌も歌えば踊りもおどる。音楽家のはずのアンさんが、踊りも演技も率先してやるから、なんとも賑やかである。

アンさんは、作曲し、小説も書き、お茶の研究書も出している

アンさんは、作曲し、小説も書き、お茶の研究書も出している

ワークショップの時間は2時間。いささか盛り込みすぎのプログラムかなあ、と心配したが、どうしてどうして。参加者のノリのよいことといったら。演技や演奏のボランティアを募ると、その場でどんどんでてきてくれる。

そんなこんなで、時間通りに進行できた。ふり返りのコメントを読ませてもらうと、さっそく自分でも取り入れたみたいという声がたくさんあって、思った以上に満足度の高いセッションだったことがわかる。

今回のワークショップは、パース、シドニー、メルボルン、東京と、それぞれ本拠地の違う4人のコラボレーションで成り立っている。国際交流基金や教師会に働きかけ、こうした企画を実現させてしまった藤光さんの熱意には、感心するほかない。

慎吾さんは、テレビ収録を終えてメルボルンに駆けつける

慎吾さんは、テレビ収録を終えてメルボルンに駆けつける

藤光由子さんと一緒にワークショップをしたことのある千葉美由紀さん(国際文化フォーラム)から、「前日は寝かせてくれない、本番20分前まで改訂の手をゆるめない。それほど準備を徹底する方ですよ」と脅されたが、やってみてなるほどと納得した。旅先にもかかわらず、相談を重ねるごとに、ちゃんと書き直したプロットや資料を用意してくれるから、プログラムの細部までどんどん洗練されてゆく。

タイルがとても美しい

タイルがとても美しい

ほっそりと優雅な身のこなしの藤光さんの、どこからそんなエネルギーがでてくるのだろうか。アジア、オーストラリアの各地で日本語定着の仕事を続けてきた藤光さんだが、今回、ご亭主が専業主夫として家事全般を担当していることを知った。二人のご子息も、ご亭主の手づくり弁当で育ったという。なるほどそうか。オーストラリア全土の日本語学習者に広がっている藤光さんの「お弁当デザイン・プロジェクト」はこうした背景から、生まれたものだったのだ。

そして数年前、中野佳代子さん(国際文化フォーラム・事務局長)と一緒に研究室に乗り込んできて、初見のわたしに「どうしても獲得研に入れていただきたいんです」と迫ったときの静かな迫力を思い出した。

獲得研の歴史でみると、おそらく今回のワークショップが、最初の「あかり座海外公演」という位置づけになっていくことだろう。こうした新しいスタイルの創造が、新しい家族像をつくってきた藤光さんによって拓かれたということに、とりわけ大きな意味があると感じている。