月別アーカイブ: 4月 2015

メルボルンでワークショップ

2日間で300名を超す参加者がある

2日間で300名を超す参加者がある

JLTAV(ビクトリア州日本語教師協会)の年次大会で“Bring your Japanese ALIVE through drama”と題するワークショップをした。コーディネーターは、獲得研会員の藤光由子さん(西オーストラリア州教育省アドバイザー、パース在住)である。

カンファレンスの会場は、100年を越す歴史的建造物で、格調のある美しいホテル。そこのヘリテージ・ルームという宴会場を、ワークショップ会場に仕立てた。当日の参加者は40名ほど。日本人の先生も10人余り参加している。

メルボルン 105

本番では、まず「全身で学ぶ」「教師は学びの演出家」など、獲得研の基本コンセプトを参加者に共有してもらい、そこから3部に分けてプログラムを展開した。

第1部は私がファシリテーター役になって、人と人が打ち解けるプロセスを経験してもらう。「後出しジャンケン」「歩いてあいさつ」など7つの技法を、シリーズ第2巻『学びへのウォーミングアップ』から選んで構成した。

メルボルン 112

第2部の進行を、宇佐美慎吾さん(俳優、シドニー在住)が担当した。参加者がニュース・レポーター役を演じる「ロールプレイ」の紹介である。スタジオにいる慎吾さんの質問に答えて、参加者が京都で舞妓さんにインタビューしたり、公園から花見の様子を実況中継したり、といった具合に進んでいく。

メルボルン 126

第3部は、アン・ノーマンさん(尺八奏者、メルボルン在住)による日本の民話「おむすびころりん」のストーリー・テリング。参加者みんなが協力し、鉦や太鼓、鈴やササラなどを演奏し、歌も歌えば踊りもおどる。音楽家のはずのアンさんが、踊りも演技も率先してやるから、なんとも賑やかである。

アンさんは、作曲し、小説も書き、お茶の研究書も出している

アンさんは、作曲し、小説も書き、お茶の研究書も出している

ワークショップの時間は2時間。いささか盛り込みすぎのプログラムかなあ、と心配したが、どうしてどうして。参加者のノリのよいことといったら。演技や演奏のボランティアを募ると、その場でどんどんでてきてくれる。

そんなこんなで、時間通りに進行できた。ふり返りのコメントを読ませてもらうと、さっそく自分でも取り入れたみたいという声がたくさんあって、思った以上に満足度の高いセッションだったことがわかる。

今回のワークショップは、パース、シドニー、メルボルン、東京と、それぞれ本拠地の違う4人のコラボレーションで成り立っている。国際交流基金や教師会に働きかけ、こうした企画を実現させてしまった藤光さんの熱意には、感心するほかない。

慎吾さんは、テレビ収録を終えてメルボルンに駆けつける

慎吾さんは、テレビ収録を終えてメルボルンに駆けつける

藤光由子さんと一緒にワークショップをしたことのある千葉美由紀さん(国際文化フォーラム)から、「前日は寝かせてくれない、本番20分前まで改訂の手をゆるめない。それほど準備を徹底する方ですよ」と脅されたが、やってみてなるほどと納得した。旅先にもかかわらず、相談を重ねるごとに、ちゃんと書き直したプロットや資料を用意してくれるから、プログラムの細部までどんどん洗練されてゆく。

タイルがとても美しい

タイルがとても美しい

ほっそりと優雅な身のこなしの藤光さんの、どこからそんなエネルギーがでてくるのだろうか。アジア、オーストラリアの各地で日本語定着の仕事を続けてきた藤光さんだが、今回、ご亭主が専業主夫として家事全般を担当していることを知った。二人のご子息も、ご亭主の手づくり弁当で育ったという。なるほどそうか。オーストラリア全土の日本語学習者に広がっている藤光さんの「お弁当デザイン・プロジェクト」はこうした背景から、生まれたものだったのだ。

そして数年前、中野佳代子さん(国際文化フォーラム・事務局長)と一緒に研究室に乗り込んできて、初見のわたしに「どうしても獲得研に入れていただきたいんです」と迫ったときの静かな迫力を思い出した。

獲得研の歴史でみると、おそらく今回のワークショップが、最初の「あかり座海外公演」という位置づけになっていくことだろう。こうした新しいスタイルの創造が、新しい家族像をつくってきた藤光さんによって拓かれたということに、とりわけ大きな意味があると感じている。

早稲田大学で公開研究会

卒業式前に工事の柵がとれ、広々きれいになった

卒業式前に工事の柵がとれ、広々きれいになった

土曜日に、戸山キャンパスで「地域実践からみる実践研究の必要性と方向性」と題する公開研究会があった。6月にある国際理解教育学会(JAIE)の特定課題研究に向けた準備会合だ。今回の、コーディネーターは早稲田大学の山西優二先生である。

定住外国人の地域参画を積極的に促している「武蔵野市国際交流協会」、地元企業などの協力で年間29トンの食品ロスをなくしている「フードバンク岡山」、日本で3番目のフェアトレードタウン認証を目指して活動している「逗子フェアトレードタウンの会」の取り組みは、どれも創意的で面白かった。

16階の会議室からの眺め

16階の会議室からの眺め

これまでやってきた名古屋の椙山女学園大学附属小学校や尼崎小田高校の公開研究会では、実践研究の主要な担い手を教師ととらえ、当事者研究としての実践研究を「課題設定―実践プランの作成―実践―振り返り―実践報告・論文の執筆―課題設定」という循環構造で考えてきた。

では地域研究では、実践研究の担い手をだれと規定するのか、それと関連して、実践のコミュニティと実践研究のコミュニティの異同をどうとらえるのか、また地域実践の中で生まれる知見をどう共有・言語化・発信するのか、などを明らかにする必要がありそうだ。

早大研究会 015

フロアから、草の根の市民運動の熱心さはみとめるが、その一方でファシズムにからめ捕られるようなある種の危うさも感じているというコメントがでて、そこからひとしきり議論になった。少し広げていえば、実践コミュニティの脆弱性、市民社会の脆弱性をどう克服するかということだろう。

これに関連してシンポジストから、自分たちの活動がどの方向に向かうベクトルをもつものなのか意識したり、活動の意味を客観化する作業をしたり、メンバーが自由に語り合う場をもったりすることが必要だという意見があった。もともと当事者研究としての実践研究の立脚点は、自己の実践を相対化する契機をどう組み込むかということにある。そろってそこに触れてもらえたという印象である。

井ノ口貴史先生の案内で委員会のキャンパスツアー

井ノ口貴史先生の案内で委員会のキャンパスツアー

それで、6月の研究大会にむけて、学校教育実践と地域実践とのつながりをより明瞭に意識できつつある、と感じたことだった。

獲得研の第4期にむけて

書斎の窓から山桜をみる

書斎の窓から山桜をみる

「春のセミナー」(3月26日)が無事に終わり、この4月から、獲得研の共同研究が第4期(10―12年)に入った。いまちょうど会員の再登録も行われている。

新学期の準備があったとしても、セミナーが終わると、例年はちょっと息をつく時間があった。今年に関していえば、2015年度中のプロジェクトの下ごしらえで、てんてこ舞いの忙しさである。セミナーのすぐあとで開かれた運営委員会も、新しい議題が満載だった。

幹を横切って花びらがはらはらと流れる

幹を横切って花びらがはらはらと流れる

気がつけば、あっという間の新学期である。書斎の窓から毎日眺めている八国山の桜が、見事に咲いた。それで久しぶりに尾根道を歩いてみた。

へえ、こんなにあったのかと驚くほど、あっちにもこっちにも山桜の古木がある。 クヌギやナラよりも色黒の幹に、桜色がよく映える。

満開のソメイヨシノももちろん良いが、私は花と若葉がほどよく混じった山桜の複雑な表情を好む。いちいち足をとめて幹の姿や花のつき具合をみるせいで、いつもの散歩よりずいぶん時間がかかった。

若葉の緑が刻々と濃さをます

若葉の緑が刻々と濃さをます

獲得研10年目の今年は、公開プログラムをたくさん用意している。前期にかぎっても、6月の成蹊小学校の授業見学、7月の日英ドラマ教育/シティズンシップ教育セミナー、8月のあかり座沖縄公演と企画が目白押しだ。

いつにもまして忙しい1年になりそうだが、その分、新しい成果も期待できる。

2016年の春のセミナーは、さまざまな成果を持ち寄って、獲得研の10周年を盛大に祝いたいと思っている。

神田川沿いの桜

椿山荘と神田川散策 014ワイフの案内で、椿山荘を起点に、神田川沿いの桜見物をした。この季節にくるのははじめてである。好天に誘われて老若男女がつめかけている。 桜ももちろんきれいだが、椿山荘の椿の種類の多さには驚いた。紅獅子、都鳥など、知らない花がたくさん咲いている。

これは雪椿

これは雪椿

それで、英国コーンウォールにあるナショナルトラストの大庭園・トレウィゼンを思い出した。こんな所にというくらい不便な場所にあるマナー・ハウスの庭である。私のもっとも好む庭のひとつだ。おそらく椿の庭として知られるせいだろう。案内板に、英国留学中の現皇太子がここを訪問した、と書いてあった。 椿山荘と神田川散策 019神田川にでると、かなりの風で、もう大きな花筏ができている。両岸からせいせいするくらい長く伸びた枝の全部に、うすいピンク色の花がびっしりついていて、チョット息苦しいくらい迫力がある。

新江戸川公園にも中国の団体客が

新江戸川公園にも中国の団体客が

新江戸川公園(旧細川藩本邸)から神田川にかけてが、学生時代の散策路だったそうで、授業の合間に良く歩いたところだという。たしかに地図でみると、川のむこうに新目白通りをへだてて早稲田のキャンパスが広がっている。 椿山荘と神田川散策 031今年の東京は、開花もあっという間なら、落花も早いらしい。しばらく川沿いを歩いてから、都電荒川線に乗ってJR大塚駅にでた。車窓からも桜がよくみえる。

たった半日だが、ゆっくりした時間をもてたのは良かった。ただし、夜半、油断していた花粉症の症状がドッと悪化したのには難渋した。