臥龍の松

南から東北方向にのびる幹

南から東北方向にのびる幹

生家の庭に、地面から斜めにのびる松の木がある。一抱えもある幹が、中空にむかってうねうねと伸びあがっていく姿は、まるで何かの生き物のようである。いったいどんな撓め方をしたのかだろうか。

これが臥龍の松といわれるものかと再認識したのは、「獲得研レクチャーシリーズ4」で、先輩の保立道久さん(東京大学史料編纂所教授)の講演を聴いてからである。この講演で、神が仏に帰依するかたちで本地垂迹説がうまれ、三位一体の自然神が「龍」というシンボルに形象化されて水神や疫病をくいつくす存在になっていく、という紹介があった。

枝先はさらにうねうねしている

枝先はさらにうねうねしている

園路がこの松の下を通っている。だから庭を散策するときは、まず奇妙な枝ぶりをみあげ、次に少し腰を折って幹の下をくぐるかたちになる。

もともとここは苔庭だったというが、それにしても、いまは松の幹の三分の一ほどが苔におおわれてしまっている。東庭にある古井戸を使わなくなり、水位が上がったせいだ。樹木の保存環境として決してのぞましいものではない。ただ、龍としての迫力はいっそうました感じがする。

古木の中の息づく生命力を感じる

古木の中に息づく生命力を感じる

昨年、龍の背にあたる部分の太い枝が一本枯れた。ところが、今回の帰省で、幹の真ん中あたりからポツンとひとつ新芽がでているのに気づいた。雨に濡れて、緑が一際鮮やかである。ゴツゴツした地面からいま生まれたという風情があって、どこか神秘的ですらある。舟越保武に『巨岩と花びら』というタイトルの画文集があるが、そんなコントラストの面白さを感じさせる。

臥龍の松に、こんな脇枝を発見するのははじめてである。この先どう変化するのか、少し様子をみようかと思っている。

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