私学の国際教育研修会(2)

国際教育研修会の本 2 006

研修会から生まれた2冊目の本が、2007年刊行の『地球時代の表現者―狂言、朗読、演劇、詩』(小林和夫編 銀の鈴社)である。直近に行われた7本の講演のうちの4本が収録されている。

メンバーは、茂山千作、山田誠浩、平田オリザ、長田弘の各氏。文字通り各界を代表する講演者が、表現やコミュニケーションのあり方を、多様な視角から立体的に考える手がかりを提供してくれる。

わたしは序章「私立学校の先進性と国際教育」を書いた。ここでいう私学の先進性は、たんに公立学校に先駆けて国際教育のプログラムを導入するというような意味ではない。長いスパンで教育の行く末を考えたり、国際的動向を分析しながら学校教育のあり方を広い視野から相対化したりすることまでを含んでいる。

また、既存の環境に働きかけて、その方向性を変えるべく、永続的に努力を重ねることでもある。そう定義するのは、専門委員として研修会をリードした小林和夫氏と、平野吉三氏(啓明学園理事長)のリーダーシップにじかに触れたからである。

専門委員長になってからの小林さんは、中村学園百年の伝統に清新の気をおくる様々な事業に踏み出した。その一つが中村高校国際科の設置である。2年生の全員に一年間の海外留学を経験させるプログラムが特徴で、たっぷり異文化体験をつんで帰国したたくさんの生徒が、自らの体験を反芻し、次の目標を定めて大学に進学している。

平野さんは、類まれな行動力を持つ経営者である。自らが発表者の一人になって「旧東側諸国(スロバキアと中国)との姉妹校交流」という実践報告を行うかと思えば、飛行機の直行便が就航したばかりのモンゴルに渡り、現地校との交流の口火を切ったりもする。「難民の子どもたちを学校に受け入れることなしに、日本の教育の国際化はない」というのが長いあいだの信念で、その実現にむけた努力をもつづけている。

柔軟な発想をもつこうしたリーダーの存在が、闊達なディスカッションの基盤になる。わたしが長く委員を続けられた理由の一つは、専門委員会のそうしたリベラルな雰囲気に負うところが大きい。

研修会は、30年の歴史を刻んでその幕を閉じ、国際教育はいまや多様化の一途をたどっている。わたしはその現状を、あらゆる現代的課題をひきつけて大きく渦をまく「磁場」になぞらえた。残された2冊の講演集は、このような時代の証言としての意味をもっている。

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