ロイヤル・オペラ・ハウス

おなじロンドンの劇場でも、スタッフの対応の丁寧さにおいてロイヤル・オペラ・ハウスが群を抜いている。ここは、公演のないときでも自由に出入りできるオペラとバレエのための劇場である。

コヴェント・ガーデン 広場側の入り口

コヴェント・ガーデンの広場側入口

何年か前のことだが、近くにあったはずの演劇博物館がどうしても見つからない。それで、受付の若い男性にきいたら「恥ずかしいことですが、最近、資金不足で廃館しました」といってから「展示品の一部がビクトリア&アルバート美術館に引き取られたそうです」と教えてくれた。博物館がなくなったことへの落胆より、恥ずかしながらなどという表現が自然にでてくることの方にまず驚いた。

開演の前に

開演の前に

今回、朝の9時半にロイヤル・バレエの当日券を買いにいったら、もう20人ほどが建物の前で列を作っていた。10時開門。案内係の中年男性がカウンターのそばまで誘導し、一人ひとりに声をかける。そのエレガントな対応で、当日券が50枚ばかりあることや残っているチケットの種類などについて、カウンターに行く前に知ることができた。

公演は、「アポロ」など三演目である。同じプログラムでの上演は3回だけだから、よほど日程に恵まれないと短期旅行者が観るのは難しい。それでも、客席に日本人の姿がめだつのはブームの影響だろうか。

昨年夏のアフリカ音楽ワークショップ

昨年夏のアフリカ音楽ワークショップ

オペラ・ハウスの裏側がコヴェント・ガーデンの広場である。広場の真ん中にあるレンガ造りの建物は昔の青果市場でミュージカル『マイ・フェア・レディ』の舞台だ。もともと庶民がはたらく空間だったわけだが、いまでもこの周辺はお祭りのような喧騒につつまれている。

大道芸人が同時多発的にパフォーマンスを披露するので、あちこちに人だかりができるし、吹き抜けになった建物の地下広場でも、若い演奏家や歌手が入れ代わり立ち代わり音楽をかなでているからだ。雑多なものの混交する空間がコヴェント・ガーデンである。

ドームの下が大きなレストランとバーになっている

ドームの下が大きなレストランとバー

オペラ・ハウスのバレエ公演が、特定の文法にしたがって極限まで鍛えられた身体をもつダンサーの動きを鑑賞するためのシステムだとすれば、そこは、観客のふるまいや服装まで含めて、システムを支えている身体性が露出する空間でもある。劇場で働くひとたちの応対ももちろんそれとつながっている。

だから、この一帯にただよっているは、オペラ・ハウス内の静けさと広場の喧騒とのコントラストだけでなく、立ち居ふるまいや身体性のコントラストでもある。わたしはその振幅の大きさをいつも面白く感じている。

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