日別アーカイブ: 2013/01/02

野鳥をみる―八国山

11月の八国山

11月の八国山

庭の梅の木に白ハラがとまって、野鳥シーズンの到来をつげたので、2か月ぶりに八国山をあるいてみた。

わたしは、書斎の窓から八国山を眺めくらしている。山とはいっても、東西に細長くのびる丘陵である。地面の高さだけなら、せいぜいわが家の屋根の3倍ていどだろう。

コナラ、クヌギ、イヌシデ、山桜などの雑木林をぬって尾根道がはしる。ゆるいアップダウンのある全長2キロの道は、早朝から日の暮れまで、散歩やジョギングを楽しむひとでいつもにぎわっている。尾根道の東端には、新田義貞の鎌倉攻めのおりの史蹟・将軍塚もある。

八国山の北側は、いまでこそ1100世帯がくらす住宅地だが、もともと大谷たんぼと呼ばれた農地である。引っ越してきた当時は、まだ半分も分譲されていなかったし、八国山を散策する人の数もすくなかったから、トトロのネコバスが、尾根道のむこうから飛んででそうな雰囲気だった。

1月 日が傾くころ

1月 日が傾くころ

バードウォッチングに熱中し、八国山を縦横に歩き回るようになったのはそんな頃である。それで、定番のツグミ、シロハラ、ジョービタキの類から、オオタカ、カケス、アカゲラ、トラツグミ、キレンジャク、キクイタダキなどまで確認できたから、どんどん勢いがつき、ついには窪地のいくつかに名前をつけ、自作の地図の上に観察記録をつけることまでした。

「ルリビーの沢」は、急斜面で、自然石の階段が長くつづく場所。ここには、毎冬きまって、まん丸の目玉が愛くるしいルリビタキがやってくる。ある年、高い山からおりてきたこの賓客は、きわめて社交的だった。行く手にしばしば姿をあらわすだけでなく、どうかすると、沢筋をおりきるまでついてくることがあった。

地面と低い枝のあいだをせわしく行き来しては、一瞬うごきをとめて首をかしげる。どうぞみてください、といわんばかりだ。数メートルの距離をたもって、立ちどまるととまり、うごくと先へすすむを繰り返し、林の出口にくると「ここまでですよ」というようにさっと姿を消してしまう。

「ツグミ沢」は、雑木の足元に小笹が一面にひろがる大きい沢である。ここでは、背伸びするように首をのばしたツグミが、一声鳴いて枝に飛びうつる姿にかならずであえるので、こう命名した。

ある冬のはじめ、地面がざわざわするような異様な生命感が、ツグミ沢いっぱいにみちていた。地面がうごくようにみえたのはおびただしい数のツグミがいたからで、シベリアから渡ってきた群れが、この沢を中継地にしたのである。わたしの出現がかれらを驚かせたようだ。いっせいにとびたった群れが、沢の中空をものすごいスピードで旋回すると、無数の羽音が重なりあってゴーッとうなりを発した。

八国山3 002山が騒がしくなって野鳥がへったり、わたし自身が忙しくなったりして、めっきり鳥をみにいかなくなった。ただ、この季節だけの、別のたのしみがある。晴れた日の夕方、あたりの空気が急速に冷えこんでくるころ、すっかり葉をおとした雑木林に、大きなオレンジ色の太陽がスーッと落ちる、いかにも武蔵野らしい景色がみられるのだ。